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「久しぶりに出てきた左のパワーピッチャー」巨人6年目の井上温大(23歳)が覚醒…元中日の左腕エース・今中慎二が絶賛する「ピッチングの秘密」とは
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鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/04/28 11:42

今季4試合に先発し2勝、防御率1.61の好投をみせている巨人の左腕・井上温大(23歳)
「例えば(4月15日の)DeNA戦で多投していたフォークですね。少し浅く握ってチェンジアップ気味に相手のタイミングを外して非常に効果的なボールでした。ただ感覚的に150km以上に感じる真っ直ぐがあるから、フォークが小さく落ちても凄いチェンジアップとなって有効だったんです。真っ直ぐの腕が振れているから、フォークも腕が振れる。真っ直ぐで腕が振れていなかったら、チェンジアップにならないですから。真っ直ぐに自信が出てきているからこそ、フォークも良くなって自信を持てるようになっている。彼の投球内容を見ていて僕はそう思いますね」
全てはストレートの質のランクアップから始まっている。そこにグレードアップした今シーズンの井上のピッチングの秘密があるということである。
「去年から真っ直ぐがいいピッチャーだなとみていました。バッターが真っ直ぐを狙っていても、なかなか一発で仕留められない真っ直ぐですよ。それと多くの投手がリキむとボールが中に入ったりミスするんだけど、彼はリキむと逆にボールがガッとくる。自分の思っている気持ちとボールが一致するということ。それが一番ですね」
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今中さんは絶賛した。
必要なのは「接戦の中で完投する経験」
そんな今中さんがこれから井上がさらに成長していくために必要なのは一にも二にも経験、さらに言うなら接戦の中で完投する経験だという。
8回107球で降板した中日戦。
「球数で最初から決めていた」と試合後の阿部監督はこの交代を説明した。ただ今中さんは井上がエースとなるためには、いつかしっかり完投することの必要性を説く。
「投げながら、抑えながらピッチングというものを覚えていく。そこがこれからのテーマでしょうね。今は時代的にも先発投手は6回、7回で降板じゃないですか。そこが最後の山場で次のピッチャーにバトンを渡す。ただ、そのうち井上は完投とかしてくると思うんですよね。その時に何か掴んでくると思います。中日戦でも8回まで投げていますけど、8回と9回ではちょっと違う。達成感が違う。8回0点と9回0点じゃちょっと違う。1点差、2点差の中で9回を投げ切ることで、ベンチと野手との信頼関係が大きく変わってくると思います。今はまだまだだから阿部監督も厳しく、勝っても負けても言うんじゃないですか」
阿部監督が語る「井上の成長要素」
それがまさにエースと呼ばれる投手の条件になるということだ。阿部監督が井上に対してなかなか合格点を出さない、手放しでは褒めない理由もその高みを目指してほしいという期待であることは明白なところだろう。