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「将大…あの野郎、激励してるのに(笑)」20歳年上の戦友・山崎武司が語る田中将大愛…巨人2戦目は炎上も「勝ち運は残っている」と見るワケ
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間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/04/26 17:03

巨人2戦目は苦しい登板となった田中将大だが、楽天時代の先輩・山崎武司は復調に期待している
巨人での初登板を前にした田中を“あえて”激励しなかった。4月1日からバンテリンドームで開催された中日と巨人の3連戦。山崎氏は1、2日の2日間、解説の仕事で球場にいた。試合前にグラウンドやベンチに行けば、3日の登板に備える田中と直接会話を交わせる。だが、山崎氏は田中と会わない選択をした。
「将大は巨人に入って最初の登板が間近に控えています。今シーズン結果を出せなければユニホームを脱ぐ覚悟を持っているはずです。自分がグラウンドにいると知ったら、気を遣ってあいさつに来ます。話をするのは、将大が落ち着いてからにしようと思っています。こっちも、将大には気を遣っているんですよ(笑)」
田中の全盛期を知る山崎氏は、あの頃と今の力に違いがあると知っている。150キロを超える速球で打者を圧倒し、スライダーやスプリットで奪三振を重ねる姿には戻れない現実も分かっている。だが、田中には失点を防ぐ投球術があり、何よりも心が折れていないと感じている。
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「周りが騒ぐ日米通算200勝に将大は興味がありません。故障明けで自分の投球に手応えを得ているから現役続行を選んでいます。まだ、燃え尽きていないんです。もうやり切った、若手に勝てないと感じていたら将大はきっぱりとユニホームを脱いでいると思います」
“勝ち運”は残っていると山崎が見る根拠
17日のDeNA戦では2回6失点と打ち込まれたものの――山崎氏は田中がこのままでは終わらないと確信している。それは、プロ1年目から磨いてきた思考力と修正能力で年齢的な衰えを補えると考えているためだ。プロで長く活躍するには「マイナーチェンジする能力」が不可欠であり、田中には備わっていると説く。
「どんな選手も30代に入ると、今までの自分との違いを感じます。その時に現実を受け入れて別の方法で補えるかどうかが選手寿命を決めます。将大は今、150キロの速球を追い求めていません。140キロ中盤をキープして変化球の精度を上げ、失点する確率を下げるスタイルにモデルチェンジしています。今の自分にベストな投球や練習法を導き出せる能力があるので、故障さえなければ先発の役割を果たせると思っています」
田中が1年目から先発ローテーションに入った時に感じた「運」も失ってないと見る。
山崎氏は巨人移籍後初登板で田中が勝利を飾ったところに、勝ち運が残っていると指摘する。
勝ち投手となった中日戦では5回1死満塁のピンチを併殺で切り抜け、2番手の投手にバトンを渡した。山崎氏は「1本の安打で選手の未来が変わる場合もあります。あの場面で併殺ではなく安打を許していたら交代だったでしょう。勝ち星が付いたのは今後を左右する上で大きかったですね」と語る。
高卒1年目で将大を超える投手はいません
山崎氏は27年のプロ生活で数多くの高卒ルーキーを見てきた。中日時代には1年目から先発で勝利をマークした今中慎二氏や、史上初めて初登板でノーヒットノーランを達成した近藤真市氏らもいた。その中でも、「高卒1年目で将大を超える投手はいません。ずば抜けていました」と言い切る。シート打撃で柵越えを放ってから18年。「高校生はこんなもん」の評価は遠く懐かしい過去となっている。
〈第1回「“同期ドラ1”編」につづく〉

