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「まあ高校生、こんなもんだよね」田中将大18歳を打ち砕いた“楽天のベテラン二冠王”が驚き…初登板から3週間で「相手打者を見下ろしていた」
posted2025/04/26 17:01

2007年、ルーキー時代の楽天・田中将大。春季キャンプではこの年二冠王となる山崎武司から豪快な一発を浴びた
text by

間淳Jun Aida
photograph by
Hideki Sugiyama
ルーキーの春季キャンプ…シート打撃でホームラン
「いくら騒がれたって、まあ高校生はこんなもんだよね」
持っている能力は高い。しかし、一軍で投げるのは難しい。当時楽天でプレーしていた野球評論家・山崎武司氏は、2007年の春季キャンプに初めて参加していた田中将大投手にバットでプロの厳しさを伝えた。
甲子園を沸かせ、4球団競合の末に楽天に入団した田中との対戦を山崎氏は楽しみにしていた。シート打撃での初対戦。ベテランの山崎氏は春季キャンプに照準を合わせていない。シーズン開幕に向けてまだペースアップしていない時期にもかかわらず、田中が投じた高めの速球をスタンドに運んだ。
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「甲子園で活躍したり、ドラフト1位で入ってきたりする鳴り物入りの投手と対戦するのはすごく楽しみでした。田中将大はどんなもんだと思って打席に入りました。球速は出ていましたが、一軍のレベルには達していないと感じましたね。『高校生なんだから、こんなもんだよね』という第一印象でした」
通算403本の本塁打を記録している山崎氏は田中が入団した2007年シーズン、43本塁打、108打点で二冠王に輝いている。すでにプロで20年のキャリアを重ねていた球界を代表する打者にとって、田中は「高校生の域を出ない投手」という評価だった。
オープン戦でも田中の評価は大きく変わらなかった。シーズン開幕前の最後の登板となった横浜戦では7回3失点と試合をつくったが、5四球と課題のコントロールを改善できなかった。その他の登板でも四球から崩れるパターンが目立ち、先発ローテーションを担うには力が足りないと山崎氏は見ていた。
当時のイーグルスだから一軍…将大は運も持っていた
チームを指揮していた野村克也監督も田中を一軍に残すのか迷っていたという。指揮官と会話する機会が多かった山崎氏は「まだ一軍で使えないよな? まだプロでは厳しいよな? と野村監督は話していましたね」と回想する。
田中はオープン戦で滅多打ちを食らったわけではない。ただ、周りを納得させる成績は残せなかった。他の球団であれば、二軍に落とす選択をしただろう。それでも、野村監督は田中を一軍に残した。山崎氏は指揮官の決定に驚いたという。