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「まあ高校生、こんなもんだよね」田中将大18歳を打ち砕いた“楽天のベテラン二冠王”が驚き…初登板から3週間で「相手打者を見下ろしていた」
text by

間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/04/26 17:01
2007年、ルーキー時代の楽天・田中将大。春季キャンプではこの年二冠王となる山崎武司から豪快な一発を浴びた
「オープン戦の結果を見たら、まだ一軍は早い。いずれはチームの中心になる投手だと思っていましたが、高校を卒業したばかりだったので、そんなに焦って一軍で起用する必要はないと感じていました。先発投手がそろっているチームと違い、(楽天)イーグルスだったから一軍に入った形です。そういう意味では、将大はプロで成功するために必要な運も持っていましたね」
しかも、野村監督は田中を開幕一軍に入れただけではなく、ローテーションの一角を任せた。山崎氏は「選手たちは『一軍に残すのか。しかもローテに入れるんだ』とびっくりしていました。結果的には野村監督のファインプレーでした。チーム状況を見て、将大が先発投手として育つ可能性は十分にあると判断したのでしょう」と話す。
初登板から3週間でプロの世界に順応していた
田中のプロ1年目は決して順風満帆ではなかった。デビュー戦ではソフトバンク打線につかまって、2回途中6失点で降板。試合後、ベンチに戻って涙を流した。その後の2試合も勝ち星を挙げられず、開幕から3試合で防御率は6点台だった。山崎氏の予想通り、一軍の打者に通用しなかった。
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プロ初勝利は4試合目の登板だった。相手はデビュー戦でKOされたソフトバンク。初回に1点を失い、なおも無死満塁のピンチを招いた。しかし、ここからが、それまでの登板と違った。絶体絶命の場面にもひるまない。ギアを入れ替える。三者連続三振でしのぐと、9回2失点の完投で勝ち投手となった。田中は試合後、こう話している。
「良い意味で相手を見下ろして投げることができました。余裕を持てるようになりました」
初登板からわずか3週間で、田中はプロの世界に順応していた。山崎氏も春季キャンプやオープン戦では見られなかった田中の変化を感じていた。〈つづく〉

