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DeNA入江大生“涙のハマスタ帰還”「野球界初の手術」から597日ぶり一軍登板…今永昇太・山﨑康晃らに支えられ「投げられるのは幸せだな」
posted2025/04/21 11:03

肩の手術から復活した入江大生。最速157キロの直球は健在でプロ初セーブも挙げた
text by

石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
JIJI PRESS
普段は明るさとユーモアを兼ね備えた人間だが、インタビューをしている間、その表情を一切緩めることなく語りつづけた。
晴れてマウンドに立てることの幸せ――。
声と感情を抑えながら話す横浜DeNAベイスターズの入江大生の様子から、これまでかけてきた時間と苦労の跡が滲み出る。
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「投げられる喜びと、勝ちたいという気持ちが交互に襲ってくるんです。点を取られて悔しいこともありますが、投げられないつらさに比べたらまだいいのかな、幸せだなって」
大きく息を吐くように入江は言った。
597日ぶりの一軍登板
3月28日、中日との今シーズン開幕戦(横浜スタジアム)。入江は5‐0とリードの9回表、597日ぶりとなる一軍のマウンドに立った。ブルペンのムードメーカーの帰還に、大きな歓声がハマスタに沸いた。
「プレッシャーで押し潰されそうになりましたよ……」
極限にまで達した緊張。こんな気持ちになるのはプロになって初めてのことだった。その感情は投げるボールにも伝わり、いきなりストレートのフォアボールを与えてしまう。
「一球もストライクが入らない。これは……って思いましたよ」
ハマスタにいた誰もが復活をした入江の一挙手一投足に注目していた。その状況は逆に孤独さえ感じさせるものだったが、振り向くと内野陣が集まり入江に声を掛けた。その中には大学時代からの知り合いであり、ドラフト同期としてルーキー時代は寝食をともにしてきた牧秀悟の姿があった。自分が不在の間、キャプテンとしてチームをけん引してきた牧に対しては特別な思いがある。
「牧は第一線で活躍しながらも、周りのことを見ながら行動をしてきた人間です。どんなにしんどいときであっても、決して表情には出さない芯の強さがあって、本当に頼もしいの一言ですよね」
お立ち台での思い
そんな牧をはじめ心強い仲間たちと言葉を交わし、気を取り直し再びバッターに対峙すると、ようやくモードが切り替わる。そこから入江は、3者連続三振の圧巻の投球を見せ、試合を締めくくった。
その後、入江はお立ち台に立つと、感極まった様子で自分に声援を送ってくれる大観衆を見渡した。こみ上げるものがあった。