- #1
- #2
野ボール横丁BACK NUMBER
「じつは36年前、夏の甲子園で“魚雷バット”がブームだった」あの高校野球アイドル(巨人OB)が愛用…日本メーカーが生んだ「元祖・魚雷バット」
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byAFLO
posted2025/04/16 17:00
1989年夏の甲子園、上宮高(大阪)の元木大介。甲子園に3度出場している
星 ですから、おそらく今、都道府県大会レベルでは、もっとマルチ率が高くなっていると思います。ただ、マルチの金属バットはなかなか手に入らないんですよ。うちの店にも、花巻東ではないんですけど、東北のある甲子園常連校から注文が入ったくらいで。花巻東はOBであり、佐々木洋監督の息子でもある佐々木麟太郎選手(スタンフォード大)がマルチを使っていた関係もあり、比較的入手しやすいのかもしれません。木製バットを使っている3人のうち2人もマルチでしたね。マルチはあまり販売価格を崩さないで欲しいというメーカーでもあるので金属は4万円弱、木製バットも3万円弱と、非常に高値で販売されています。それでも、これだけ人気があるということは、よっぽど感触がいいんでしょうね。
――木製バットということでいうと、智弁和歌山の下位打線の2人の選手が使っていた1200グラムの極太バットも話題になりました。
星 あれはトレーニングバットをそのまま試合で使ったようなものです。ギアとしては「折れにくい」という以外、メリットらしいメリットはありません。あれで長打を打とうという気にはなれないでしょうから、ある種、「ギプス」のようなものでもある。あのバットを生かすには当てることに徹するしかないと思います。なので、正直なところ、試合用バットとして「これはいいよ」とすすめられるような種類のものではありません。
36年前の甲子園で“魚雷バット”が使われていた!
ADVERTISEMENT
――昨年は選抜大会のあと、数珠つなぎ式に違反バットが報告されました。少し軽いとか、少し音が高いとか。各メーカーとも回収措置に追われるなど大わらわでしたが、さすがに今年はもうないですよね?
星 いわゆる「刺し合い」ですよね。何度も言いますけど、金属バットの製造工程において基準から外れる製品ができてしまうのは、ある程度、しょうがないんですよ。だから、そこを突っつき始めると、結局、チクリ合戦に発展してしまう。去年は金属バットの基準が変わったばかりで各社ともシェア獲得争いに後れを取るまいとピリピリしていましたけど、いったん落ち着いたので、もうないと思います。ただ、懸念がないこともないんです。今、メジャーで通称「魚雷バット」が話題になっていますよね。金属バットも、あのブームを放ってはおかない気がするんです。
――金属版魚雷バットが出てくる、と。でも、昔、SSKから似たような形状のバットが出ていましたよね。
星 一世を風靡したウイングフライトシリーズですよね。80年代の甲子園で上宮高の元木大介らが使っていました。実はSSKは数年前までパワービークという魚雷型のバットを作っていたんです。ただ、使っている選手をほとんど見かけたことがないんですけど。
とはいえ、これだけメジャーで話題になると、高校球界にも魚雷バット旋風が吹き荒れかねません。となると、また、足の引っ張り合いが勃発する可能性がある。それだけは勘弁して欲しいんですよね。誰も得しないので。



