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野球のぼせもんBACK NUMBER
「育成ドラフト10位から“異例の大出世”」ソフトバンク24歳の怪物「かまぼこ板で練習」「球速145kmでも“打てない”」三軍から一軍に…前田純とは何者か
text by

田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2025/04/01 06:01

ソフトバンクの3年目、前田純。なぜ大出世できたのか
昨年夏から小笠原孝二軍投手コーチの助言で、かまぼこ板を投げるようになった。
「手首を真っすぐ立てて投げたらきれいにホップします。少しでも軸がずれると曲がったり、浮き上がらずに落ちてしまうんです」
チーム内でもすぐに評判になり、最初の頃は周りのピッチャーたちも試し投げをしてみた。誰も前田純のように浮き上がる軌道は描けない。手首を地面から見て直角に真っすぐ立てて投げる投手はなかなか存在しないのだ。
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打者にとってはどんな剛速球よりも「見たことがない球」のほうが脅威なのである。
新しい魔球も習得
また、それに加えて今季はカットボールも習得した。
しかし、それを聞いたときは正直「ん?」と思った。球種を増やすのは決してメリットばかりではない。特に前田純のように真上から投げ下ろして体を極端に縦回転で使いたい投手の場合、カットボールのような横滑り系のボールを投げようとしてフォームを崩してしまうことがあるためだ。
もちろん、前田純もそれを織り込み済みで対策はとっている。
「たしかに僕の場合、カットボールは難しいと思われるはずです。ただ、去年から1月の自主トレを和田(毅)さんのところでお世話になっていて、そこで一緒だった楽天の早川(隆久)さんに助言をもらいました。『真っすぐのように投げるけど、人差し指を主体にして投げるといい』と。そのイメージで投げてみたら感覚が良かった。使えるなと思ったし、他の球種への悪影響もありません」
前田純が危惧しているのは、カットボールを投げる際に変に力んでしまわないかという点だという。
「新しい球種だと、うまく投げられるかなとか考えるから無駄な力が入ってしまうと思うんです。だから『もともと投げていたボールだ』という意識づけでやっています」
天然キャラな一面も…
ちょっと照れくさそうにニコニコ笑いながら、そんな風に説明をする。たくさんの報道陣に囲まれると今でも緊張した面持ちを見せ、ときに申し訳なさそうな顔をして「もう1回質問いいですか?」と聞き返して笑いを誘う天然キャラを披露する。
おおらかに見えるが、芯は強い。だからこそ、のし上がってきた。
「1年目は三軍で、2年目の去年は二軍で2桁(10勝でウエスタン最多勝)勝てました。だから、今年は一軍で2桁勝利を挙げるのが目標です」
夢追う男のサクセスストーリーは、これからクライマックスを迎えるのである。
