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プロ野球亭日乗BACK NUMBER
阿部慎之助監督が呼んだ“リーグ連覇の切り札”…作戦戦略コーチが明かす“新生・巨人打線のポイント”「結果として見逃し三振OK」の意味とは
text by

鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2025/03/04 17:01
阿部慎之助監督の要請で11年ぶりに巨人に復帰した橋上秀樹作戦戦略コーチ(59歳)が今季のジャイアンツの野球について語った
結果として見逃し三振はOK
「まずフォークボールを含めて低めのボールを振らないためには、どうしたらいいかを考えること。13年前にも低めの球を振らないために、結果として見逃し三振はOKみたいな話もしました。ある程度それぐらい割り切った方が、勝負所で結果につながると思います。何度も言いますが、バッターは不利な戦いを強いられているわけですから、無難に待っていてもなかなか良い数字は出ないわけです。だからそこにある程度の賭け、賭けと言ったら根拠がないように聞こえますけど、その辺をデータを使ってベンチが指示して、結果に対しては責任を持つことが大事になります」
――責任を持ってベンチが打席をコントロールしていくということですね。
「はい。もちろん選手の能力ありきではあるんですけどね。ただ特に得点圏での成績を向上させるためには、そういったスパイスも入れていくべきだと思います」
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――割り切った末の見逃し三振OKという考え方は分かりますが、選手は自分の成績にも直結します。なかなかそこまで割り切って打席に立つのは難しいのでは?
「巨人に来てまだそんなに時間は経っていないんですけど、今のチームを見ていると、特に若い選手たちはすごく真面目な選手が多いですよね。彼らにしたら、見逃しの三振というものに対する抵抗はあると思います。でもその抵抗感が、逆にいい結果を出せないことにつながっている部分も多分にあると思います。ですから、まずそういう見逃し三振に対する抵抗感に対して、ある程度割り切り方というか、僕らが縛られているものからちょっと解放してあげられるような話をしているところです。そういう割り切りができれば、もう少し気楽に、得点圏でもいい勝負ができるようになるんじゃないかと思いますけどね」
――原辰徳前監督の時代はスイングファーストで、見逃し三振は悪という考えが多分にあったと思います。
「確かに見逃し三振というのは、見栄えのいいものではないですからね。でも、あくまで見逃し三振ありきの話ではないですから。逆なんです。結果的にそういうこともありうるよ、っていうことです。別に見逃しの三振を奨励しているわけではなくて、出塁するために、結果としてそうなってもしょうがない。それくらいの心理状態でいかないと。投手の投げるボールのスピードも上がっていますし、変化球の質も以前に比べると相対的に向上している。その中で基本的に不利な戦いを強いられるバッターは、それくらいの意識で打席に立たないとなかなか結果が出ないよっていうことですね」
阪神打線の効率の良さ
――ここ数年のセ・リーグでは、そこに長けていたのが2023年の阪神でした。
2023年の阪神のチーム打撃データ(カッコ内の数字はリーグ順位)
打率 .247(2)
本塁打 84(5)
得点 555(1)
四球 494(1)
三振 1173(1)
出塁率 .322(1)
OPS .674(3)
岡田彰布監督は3ボール1ストライクからも「待て」のサインを出して、その結果、絶好球を見逃して三振しても怒らなかった。でも結果として、そのベンチ指示がダントツの四球数と出塁率に繋がり、優勝の大きな要因となったとされています。昨年の阪神打線の効率の良さも、岡田イズムの浸透があったということでしょう。

