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「駅から10分…なぜこんな広い土地が?」長崎は“スポーツ・シティ”になれるのか…世界を巡った識者が検証「外苑、広島、ボストンにない魅力」 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byJun Ikushima

posted2025/03/01 17:00

「駅から10分…なぜこんな広い土地が?」長崎は“スポーツ・シティ”になれるのか…世界を巡った識者が検証「外苑、広島、ボストンにない魅力」<Number Web> photograph by Jun Ikushima

昨秋に開場した複合施設「長崎スタジアムシティ」の中心にあるPEACE STADIUM。この日はマッチデイではなかったため、スタジアムを自由に散策できた

 翌朝。長崎はこの日、雨だった。

 目覚めてから、バルコニーに出てピッチを眺める。大きく深呼吸すると気持ちが良い。朝食会場に行くと、そこからもピッチが見られた。

 コーヒーカップを持ち、少し肌寒かったが、コンコースに出て飲む。PCを持ってきていたので、少々仕事。長崎に移住すれば、ここを仕事場に……ということも可能なのだ。

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 かつて、アメリカのスポーツ専門誌『スポーツ・イラストレイテッド』が元気だったころ(私の憧れの雑誌でした)、「ベストスポーツ・シティ」や「ベストスポーツ・カレッジ」という特集が度々組まれていた。主に「見るスポーツ」の観点から選ばれていたが、いま、日本で選ぶとするなら、長崎は間違いなくトップ10に入ると思う。

 日本でほかにパッと思い浮かぶのは広島と、東京・外苑エリアだ。広島は市内に球場(駅近で球場内も回遊性抜群!)、そしてサッカースタジアムがあるのが大きい。外苑エリアは、国立競技場(色気がないけどね)、神宮球場(シートが狭いけどね)、秩父宮ラグビー場(記者席は寒いけどね)がそろっており、鉄道の利便性このうえなく、試合後の混雑ストレスが少ない。また、試合後は新宿、渋谷の繁華街へと「反省会」に移動できるのも魅力だ。

 世界に目を転じると、思い浮かぶのは秋のボストンだ。レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークの緊張感、アメフトのペイトリオッツの無双(トム・ブレイディがいなくなってから弱いですが)、10月に入るとアイスホッケーのブルーインズ、11月にはバスケットボールのセルティックスが次々にシーズンインしていく。秋のニューイングランドの黄葉を見ながらのドライブも素敵だ。

 さて、こうした都市に対して、長崎のポジティブ要素として挙げられるのは、以下のようなものだ。

・長崎駅からのスタジアムへのアクセスの良さ
・町とスタジアムがつながっていること
・サッカー専用スタジアムとしての見やすさ、ピッチとの距離の近さ
・コンパクトで、ファンの熱が凝縮しやすいアリーナ
・飲食、観光スポットの充実(遠征組にとっては大事な要素)

 これからの日本には「スポーツ・シティ」が増えていって欲しい。町のなかにスポーツを楽しめる場所があること、それが豊かなことだと、長崎はプレゼンテーションしている。

 今回は2泊の滞在だったが、3月、4月に4泊くらいの計画を立てれば……V・ファーレンとヴェルカの試合を両方楽しむことも可能なことに気づいた。

 その間にTBSテレビのドラマ『海に眠るダイヤモンド』で話題になった端島に行ったり、島原に足を延ばすことも可能だな……と妄想ばかりが広がる長崎スタジアムシティ探訪だった。

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