スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「駅から10分…なぜこんな広い土地が?」長崎は“スポーツ・シティ”になれるのか…世界を巡った識者が検証「外苑、広島、ボストンにない魅力」
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byJun Ikushima
posted2025/03/01 17:00

昨秋に開場した複合施設「長崎スタジアムシティ」の中心にあるPEACE STADIUM。この日はマッチデイではなかったため、スタジアムを自由に散策できた
時々、頭上から声が聞こえてくる。「なんだ?」と思ってみると、人が滑空しているではないか。「あれはジップラインです。ビルとビルの間をつないでいるので、ピッチの上を滑走できるんですよ」とKさんの解説。ここは公式ホームページから引用させてもらおう。
『日本初サッカースタジアム上空を滑走し、絶景を楽しめるジップライン! 目の前に広がる長崎の港、そして横に見える稲佐山。長崎の美しい景色と長崎スタジアムシティの特別な眺めを同時に堪能できる贅沢な体験をぜひお楽しみください』
高いところが苦手な私はパスしてしまったが、もう20歳若かったら、挑戦していたかもしれない。
ADVERTISEMENT
ジップラインを楽しむ人を見ながらウロウロしていると、商業施設のなかには学習塾、ドラッグストア、そしてスーパーマーケットまである。聞けば、コンコースは保育園の散歩コースにもなっているという。
これは、たいへんに豊かなことだ。首都圏で同じような施設を作ることは、土地の問題でなかなか難しいだろう(長崎スタジアムシティは、三菱重工の工場跡に作られた。市の中心部に大規模な土地があったのだ)。
部屋から緑のピッチを眺める
この日は、夕方からアリーナでBリーグの長崎ヴェルカの試合を取材することになっていた。その前に、Kさんのオススメもあって予約した「スタジアムシティホテル長崎」にチェックイン。
エレベーターでロビー階に上がると、サッカーとバスケットボールのデザインがいたるところに見られる。
部屋はスタジアム側と山側があるが、どうせ泊まるならと思いスタジアム側に投宿した(山側よりもやや高め)。エレベーターを降りて部屋に向かうと、三笘薫が所属するブライトンのタペストリーが見えたりして、サッカームードが高まる。
そしていよいよドアを開けて部屋に入ると、ベッドにはサッカーボールのクッションが。頬が緩む。そしてバルコニーに目を向けると……。
スタジアムのスタンド、そして緑のピッチが広がり、その先には稲佐山の山頂が見える。
窓を開け放つと、そこはスタジアムの一部になる。この日は試合がなかったけれど、楽しい。お茶を入れてバルコニーに腰を落ち着けると、ゆったりとした気分になる。