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藤浪晋太郎より評価されていた“中学No.1投手”の今…高校で悲劇、激痛が襲った「骨に直接注射を打った」天才が絶望した日…医者は「投げ過ぎだよ」
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byHiroaki Yokotsuka
posted2025/02/21 11:02
大谷世代の中学日本代表でエースだった横塚博亮さん
「フォアボールでランナーを出すと、それだけでピンチみたいな空気になる。それもピッチングが小さくなってしまった原因だと思うんです」
コントロールを意識するあまり、中学時代、最高で143kmをマークした球速は140kmにさえなかなか到達しなくなっていた。
また、高校時代は故障が絶えなかった。1年冬は原因不明の膝痛に襲われ、2年春にはベネット症候群を患った。肩関節の骨が変形し、投球時に痛みが生じる野球障害の一種だった。
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「投球練習しても手に握力が入らなくなっちゃって。食事のとき、コップを持ったつもりが落っことしちゃったり。あまりにもおかしいので病院に行ったら『投げ過ぎだよね』って言われました」
手術でなく痛み止めを選んだ…
中学時代、連投も厭わず投げ続けたことが災いしたのかもしれない。そこからは肩の痛みとの戦いだった。2年夏のベンチ入りを目指し、誤魔化しながら投げ続けた。しかし、その夏を迎えた頃からいよいよ耐え切れなくなり、本格的な治療を開始する。同時に、手術をすると3年夏に間に合わないと言われたため、メスを入れずに治す道を選んだ。
「もともとプロ野球選手になりたいとかではなく、甲子園に出たいというのが最初にあった。その夢が絶たれたら、何の意味もなくなっちゃうので」
2週間に一度、骨に痛み止めの注射を打った。
「肩に放射線を当てて、モニターで骨の位置を確認しながら打つんです。骨に直接打つのって、めっちゃ痛いんですよ」
しかし、2カ月も打ち続けると、次第に効き目が薄くなった。
「もう効かないんですよ。今もですけど。どっか痛いなと思って痛み止めの薬を飲んだりしてもぜんぜん効かない。高校時代、強い痛み止めを体に入れたからだと思うんです。頭痛薬とかも効かないのでもう飲まないです」
もはや打つ手はないに等しかった。
「痛くないように、痛くないようにって投げるから、どんどんフォームがおかしくなっていく。アップのとき遠投もしたくないので、腕も大きく使えなくなってくる。完全に悪循環でした」
3年生に上がる直前の3月、自分が置かれているポジションを嫌でも見せつけられる出来事があった。
〈つづく〉

