炎の一筆入魂BACK NUMBER
内田湘大、常広羽也斗、佐藤柳之介…「変革」が旗印のカープキャンプで新井監督も期待を寄せる成長株の進化の証とは《キャンプ中間報告》
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前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/02/17 06:00

紅白戦で3点二塁打を放つ、高卒3年目の内田湘大
5日の全体練習後の課題練習でチェンジアップの改善に取り組んでいると、黒田博樹球団アドバイザーから、どうしても腕の振りが緩むことを指摘された。「大学ではごまかせても、プロでは“そこ”を突かれる。スプリットを投げてみよう」と提案され、言われるがまま1球投げると、ブルペン捕手と黒田アドバイザーが目を合わせた。続けて2球目を投げると、今度は直接、声をかけられた。
「チェンジアップよりもスプリットの方がいいんじゃないか。真っすぐの腕の振りと変わらないし、ベース板での強さもある。落ちなくても、チェンジアップのようになってバッターにとっては嫌だと思うぞ」
目からうろこだった。大学時代は持ち球の中でも優先順位が低かった。落ちないと使えないと思っていて、「落ちなくてもいい」という発想がまったくなかった。さらに「落ちる方向を本人が分からなければ、打者も分からない」とも言われた。未完成なものが武器となる気づきによって、より左腕を振れるようになった。
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沖縄に移動後、13日のブルペン投球で打席に立った新井監督も、その精度を評価した。
「スプリットがすごく良かった。ちょっと優先順位が上がっているみたい。打者の手元まで真っすぐに見えるから、あれだったら十分通用すると思う」
激化する開幕ローテーション争い
森下、床田寛樹、大瀬良大地の3本柱に、昨季経験を積んだアドゥワ誠に玉村昇悟、そして先述した常広と、先発ローテ争いに割って入ることは容易ではない。それでも、大学時代から進化を見せる新人左腕が実戦派であることを証明できれば、開幕ローテ争いはさらに激しさを増す。
2月下旬にオープン戦が始まると、サバイバルレースは本格化する。実戦でこそ、真価が問われる。一軍メンバーのふるい落としだけでなく、二軍で調整する選手たちも一軍に呼ばれるだろう。広島の開幕一軍、開幕スタメンの争いの決着は最終コーナーを回るまで、分からない。
