Number ExBACK NUMBER
賞金1000万円、ジャイアント白田との死闘…“大食い界のプリンス”と呼ばれた小林尊が振り返るフードバトル黄金期「めっちゃ批判もされましたよ」
text by

荘司結有Yu Shoji
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/02/17 11:01
「大食い界のプリンス」と呼ばれた伝説のフードファイター・小林尊のインタビュー(第2回)
従来の大食い企画では、茹でたジャガイモや温泉卵のみなど「えっ……こんなものを食べ続けるのか」と視聴者に思わせる見せ方もしばしばだった。一方、FBCで提供されるラーメンやステーキ、寿司などは、どれも都内の名店によって作られたもの。それは出場者に対するリスペクトの表れでもあった。
「めっちゃ批判もされましたよ。あんなに高級なものを味わわないで食べるなんて無礼だとかね。でも、僕らからしたら本気でトレーニングをしてきて、最高の戦いを見せようとしているんだから、最高の食材で戦わせてくれよって。
番組側も『小林くんたちがこんなに頑張っているんだから、こっちも一流のものを出したい』というスタンスで、そこがフィットしていたからやりやすかったんです。だからこそ僕らもすごいパフォーマンスを見せなきゃなと、お互いに高め合っていた感じでしたね」
人気を生んだ「ジャイアント白田との死闘」
ADVERTISEMENT
そのFBCの名物が、小林と白田の死闘だった。
白田は2001年のTVチャンピオンの新人戦でデビュー。射手矢に続いて2位に入った。第3ラウンドから現地で見守った小林は、白田に底しれぬ強さを感じたという。
「番組スタッフからは事前に『あまり期待できないかも』と聞いていたんです。確かにあの時点ではものすごい力強さはなかった。でも、まだ身体を生かしきれていない感じがあったんですよね。底が見えない強さというか……」
白田、いずれ化けるんだろうな。
その予想は的中する。身長195cmと並外れた体躯を持つ白田は、いわば大食いのポテンシャルの塊のような男だ。第2回から参加した白田は、初代王者の小林を破り優勝。その後も小林との決勝を制して3連覇を果たし、“大食い大魔神”として番組の代名詞的存在となる。小林も、その強さを認めざるをえなかった。
「白田の身体の大きさは一つの才能ですよね。大会までの調整しかり、色んな面で突き詰めていかないと勝てないなって。僕は身体が小さい分、その才能を超えるくらいのトレーニングのアイデアだったり『総合力』で勝つしかない。当時はフードファイトのことしか考えていなかったから、生活している中でも何か生かせることはないかと常にアンテナを張っていましたね」
他の選手とは一線を画す“独自のトレーニング”
小林は独自のトレーニングを模索した。まず飲み込む力をつけるために上半身を鍛え、ボディビルダーのような肉体を手に入れる。アスリートに着想を得て、クレアチンやカーボ・ローディングも取り入れたという。凍ったパンをかじり、顎の力を鍛える。こうした創意工夫は、彼の特徴であり、後に全米を席巻する強さにつながっていく。
胃を拡張し、強靭なものへと進化させる「食トレ」にも彼なりのアイデアがあった。それは、コンニャクとキャベツを一定量食べた後、水を流し込むというものだ。
「要は、飲んだ水が胃から腸へ流れないように、コンニャクとキャベツで蓋をするんです。キッチンの排水溝が詰まるのをイメージしてもらえば分かりやすいんじゃないかな。蓋をした上に時間をかけて水を流し込むことで、胃にゆっくりと圧力をかけて可動域を広げる、といった具合です」
多くのフードファイターは、大会にむけて食べ放題などに通い、胃の限界まで食べ物を詰め込んで胃を拡張させていく。一方、小林はある程度胃に柔軟性が備わったら、後は食料を詰め込まなくても大量の水だけで胃の容量を保てたという。

