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「他局には出られない」人気絶頂の小林尊を“テレビから消した”独占契約問題…伝説のフードファイターはなぜ“賞金1000万円の引退試合”を行ったのか?

posted2025/02/17 11:02

 
「他局には出られない」人気絶頂の小林尊を“テレビから消した”独占契約問題…伝説のフードファイターはなぜ“賞金1000万円の引退試合”を行ったのか?<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

「大食い界のプリンス」と呼ばれた伝説のフードファイター・小林尊のインタビュー(最終回)

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荘司結有

荘司結有Yu Shoji

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Takuya Sugiyama

20249月、伝説のフードファイターが引退した。小林尊、日本とアメリカで地上最強と呼ばれた男である。「見世物」だった大食いを「スポーツ」に変えた革命児の内面に迫る。《NumberWebインタビュー/全3回の最終回》

平成の大食いブームで圧倒的な存在感を放った、フードファイターの小林尊(46歳)。昨年秋、因縁のライバルとの対決を最後に、フードバトルの舞台から降りた。小林はそのスター性や実力ゆえに、大会側による“契約問題”のトラブルにたびたび巻き込まれてきた。彼は何と戦ってきたのか――。

◆◆◆

<最も有名と言っていいほど、アメリカ人の誰もが知っている日本人は小林さん>

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 昨年秋、菊池雄星(現エンゼルス)がXでこう発信したように、小林と言えば全米では「オオタニ」にも匹敵する有名な日本人アスリートだ。

 それもそのはず、小林はニューヨークで毎年、独立記念日(7月4日)に開かれる「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権」で6連覇。1916年から続く歴史ある大会は、毎年3万人以上の観客が訪れ、100万人以上が中継を視聴する全米の一大イベントである。小林の人気は、アメリカの国民的アニメ「シンプソンズ」に彼をモデルにしたキャラクターが登場するほどだ。

 彼の約24年間の現役生活を紐解くと、米国での活動が10年以上を占め、日本での活動歴はたった1年半ほど。米国での知名度がより高いのもうなずける。それでもなお、日本で“平成の大食いスター”として名を刻んでいることに、彼が与えたインパクトの大きさがうかがえるだろう。

日本のテレビから消えた理由は“局との独占契約問題”

 “プリンス”あるいは“貴公子”と呼ばれた彼の登場は鮮烈だった。

 2000年11月、テレビ東京の「TVチャンピオン『全国大食い選手権』」で優勝。2001年7月、番組の特別企画でネイサンズに出場する。ソーセージを半分に折って口に押し込み、残ったパンを水に浸して飲み込む。のちに「ソロモンメソッド」と呼ばれる独自の食べ方で、世界記録を倍にする50本を完食してセンセーショナルなデビューを果たした。

 大食いのイメージとはかけ離れた細身の体躯、涼やかで端整な顔立ちにも関わらず、度肝を抜く圧倒的な強さ――。小林は新世代のスターとして人気を博し、大食いは社会現象と化していく。

 そのスター性を、日本のテレビ局も放ってはおかなかった。小林はある契約を打診されたという。

「ある番組に呼ばれたときに『印鑑を持ってきてほしい』と言われたんです。収録が終わった後、会議室に連れていかれたら、スタッフが10人くらいズラッと並んでいて。『小林君への反響がすごいから、今後もいろんな局からオファーが来ると思う。でも怖い世界だから僕たちが守ってあげたいんだ』というようなことを言われましたね」

 局から打診されたのは、番組と近い関係にある事務所に所属して活動するという実質的な“独占マネジメント契約”だったという。就職をせずにフードファイターとなった小林青年にとっては、またとない提案にも思える。しかし、彼はその誘いを固辞する。求めたのは安定ではなく、自由だった。

【次ページ】 アメリカでも告げられた“たった400万円の独占契約”

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