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「英語も喋れないアジア人が単身で…?」20歳まで競技経験ゼロ…“普通のサッカー少年”が受験失敗を機に「全米最高峰」の大学アメフト部に入るまで
text by

北川直樹Naoki Kitagawa
photograph by本人提供
posted2025/02/10 11:01
NCAA1部のハワイ大学アメフト部で正キッカーを務める26歳の松澤寛政。高校まではサッカー少年だった男はいかに全米トップチームに辿り着いたのか
松澤は、ホッキングカレッジでの経験だけではトップクラスに届かないことも感じていた。それもあって、在籍中は自分から様々なアクションを起こした。NCAA1部の大学進学を目指す全米トップクラスの高校生キッカーにも直接SNSで連絡し、キャンプへのアプローチの仕方も教えてもらった。
「キャンプに行って、結果を残して、その動画を作って……そういうことをするとカレッジのコーチの目に留まるという話も聞けました」
実際に松澤は初期に参加したラスベガスのキャンプで好成績を残したことで、その後の招待制のキャンプにも声をかけられた。そこでの活躍ぶりがSNS伝手に関係者に伝わり、のちにチームに加わる道を切り開くことになる。
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2022年の12月、松澤は無事、計画通りにホッキングカレッジを1年半で卒業した。一方で、翌1月から4年制大学に移りたかったものの、その頃までに納得するオファーは得られなかった。
「卒業しちゃったし『どうしよう?』と。とりあえず一回、日本に帰ることにしました」
競技と出会って5年…NCAA1部校からオファー
そこから日本で自主練を重ねていた3月頃、ついに松澤にオファーが舞い込んだ。「(奨学金のない)一般入部であれば……」という条件付きではあったが、複数のNCAA1部の大学から誘いがきたのだ。
松澤はその中から、最終的にハワイ大学を選んだ。だが、当初は逡巡もあったのだという。
「ハワイは旅行で行くところだと思ったんです。『フットボールはやっぱり、メインランドでしょ』って。でも、ハワイ大学のコーチ陣がすごく熱烈に誘ってくれて」
もちろん本格的な競技未経験の日本人キッカーに、そこまで言ってくれるチームはほかに無かった。
「『あなたがどれだけチームに貢献できるか我々はわかっている。そして、私たちがカンセイにどれだけのことを与えられるか理解してほしい』と何回もプレゼンしてくれました」
コミュニティカレッジから編入する松澤に残された時間は、2年間。自分を求めてくれる環境下でしっかりプレーし、NFLを目指すのがいいと考え、ハワイ大学への進学を決めた。
初のアメリカ旅行から約5年がたった2023年8月。松澤はハワイ大に入学し、ようやくプロへのスタートラインに立った。
<次回へつづく>


