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プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「プロレスを続けるか悩んでいた」マリーゴールド“白いベルトの王者”の苦悩「もうドン底を味わいたくない」桜井麻衣はなぜ“覚醒”したのか?
text by

原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/02/02 17:01
マリーゴールドの“白いベルト”ユナイテッド・ナショナル王座を手にした桜井麻衣(34歳)。苦悩の末につかんだタイトルだった
「私は、上手くいかない時、チャンスを掴めない時、とても悲観的になりやすいし、ネガティブな考え方をしてしまっていました。でも友人は、『それが今の自分の実力だと素直に受け入れて、結果を出していくしかないよ』って。与えられたチャンスが来た時に結果を出さなければ、評価はされない。だから、チャンスがいつ来ても、そのチャンスを絶対掴めるように常に準備しておくことが大切だと思う。だから、今上手くいってないことを何かのせいにせず、自分が変われ。そう言われました」
友人の助言もあって、桜井は「考え方を変えて、この現状を変えたい。自分自身が変わるしかない」と思うようになっていった。
「もうドン底を味わいたくない」
「私はまだ自分の力で何も掴んでいない。何も残せずプロレスを引退するなんて嫌だ。変わりたい! だから私はマリーゴールドに行くことを決意しました。でも、やる気とは裏腹に、不器用な私は試合でなかなか自分の良いところを見せることが出来なくて……。マリーゴールドに来てから、ベルト戦線に絡めなくて、トーナメントのメンバーにも入れなくて、それがすごく悔しかった。正直、チャンスが常にやってくる選手っていると思うんです。でも私はそうじゃない。腐ってしまいそうになったりもした。でも友人の『チャンスが来たときに結果を出さなければいけない』って言葉が頭によぎりました。とにかく必死だったので、どうしたら印象に残るか、お客さんに喜んで貰えるか、凄く悩んだし、研究したし、プロレスを沢山観ました。このドン底の状況から、絶対にお客さんに『この人にベルト獲ってもらいたい』と思ってもらえる選手になろう、と心に誓ったんです」
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熱い言葉があふれだした。
「もう、埋もれたくない。埋もれていた時があったからこそ、もうこんな思いしたくない、ドン底を味わいたくない。人前に出るのも怖くなるほど、引きずりました。2月でデビューして5年になります。試合や会見も、一つ一つのものに思いを込めて、印象に残りたい。その日の興行のベストバウトを取るつもりで毎試合、試合に臨み、会見では何と言われようが印象的なことをして少しでも興味を持ってもらいたい。その思いが人一倍強かったし、誰にも負けたくなかった。そして自分のことを一番大きく記事に書いてもらいたい。『お客さんのためにやっているんだから』とも言われて、我を貫き通すようになりました。貪欲になれたのは旗揚げ戦で味わった悔しい気持ちのお陰だと思います。だから、これでよかったんだと、今では思います」


