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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥の“脳を揺らすカウンター”で「終わりが近い」じつは2ラウンドにあった予兆…世界的カメラマン“確信の1枚”「増えた筋肉…ものすごいカラダに」
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福田直樹Naoki Fukuda
photograph byNaoki Fukuda
posted2025/01/30 17:03
キム・イェジュンの顔に左フックをヒットさせる井上尚弥。世界的ボクシングカメラマンの福田直樹氏は“異例の一戦”をどう見たのか
「ものすごい体に…」カメラマンが見た肉体の変化
試合当日の井上選手の体重は過去最高の62.9kgだったようですね。撮影していても、体が全体的に分厚くなって、増えた筋肉のひとつひとつが完全に“自分のもの”になっている印象を受けます。スティーブン・フルトン戦(2023年7月25日)などスーパーバンタム級に上げたばかりのころは、まだ体を作っている過程だったんでしょうね。当時と比べると、今はものすごい体になってきている。フェザー級に行く準備も十分にできていると思います。
対するキム選手もいい体つきで、悪くない仕上がりに見えました。今回、急きょ試合のビジュアルを差し替えなければいけなかったので来日直後に撮影する機会があったのですが、感情をあまり表に出さないタイプの選手でしたね。撮影中もほとんど表情が変わらない。緊張しているのともまた違う。彼にしてみれば千載一遇のチャンスですから、いい精神状態で試合に臨んでいたのではないでしょうか。
「本気で当てるパンチ」がすべて当たっていた
両者ともに1ラウンドは慎重な立ち上がりになりましたね。井上選手はジャブで様子を見て、「当てる気がないパンチ」も打っていた。相手の体の手前、顔の手前にスイートスポットが来るパンチです。リングサイドで撮影していても「これは当てないな」とわかるので撮らないことが多いんですが、先々への布石として、意図的にそういったパンチを散らしているように感じました。
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一方、スイッチもできるキム選手は終始サウスポーに構えていた。細かい理由まではわかりませんが、井上選手が右のグッドマン用に練習してきたことはわかっていますから、その研究を外す意図があったのかもしれません。
試合が動き出したのは2ラウンドです。井上選手がさまざまな種類のパンチを打つなかで、時折「本気で当てるパンチ」を混ぜ始めた。驚くべきは、それらが全部ヒットしていたこと。顔やボディへのストレートであったり、リードのようなノーモーションの右であったり……。やはりかなりの力量差がある試合だなと思いました。



