高梨沙羅が井本直歩子に聞く、アスリートによる環境問題の取り組み方。「どうやって周りを巻き込んだらいいのか」 

井本　同じ思いを持ってる人たちと一緒に、心の拠り所を求めて、知恵を出し合って変えていければいいのかなあ。そのあたりは私も常に葛藤していますね。

ウェアの有効利用は考えられないか

高梨　最近、具体的に考えているのは毎シーズン支給されるウェアのことです。メーカー側のプロモーションのためにも、選手が着ている姿を一般の方に見てもらうのが大事なのは分かるんですけど、国によっては、同じウェアを2年とか4年とか着ているところもあるんですよ。

井本　よく分かります。私も中学2年で日本代表になって、急に選手団のスーツやたくさんの支給品をもらって、恵まれてる感がすごかったんですよね。遠征ではお土産を買ったらトランクに入り切らなくて、仕方なく置いてきたりしました。でも、ハッと気づいたら、他の国にはゴーグルもしてないような選手たちもいた。自分はなんてもったいないことをしているんだろうと。それに中学時代に気づけたのは幸運でした。

高梨　着用後のウェアを回収してアップサイクルやオークションなどができるといいですよね。

井本　言ってみたらいいんじゃないかな？　もしかしたら沙羅モデルはサステナブルなんだ、というふうに共感してもらえるかもしれない。代表ジャージとかは、もっとリサイクルやオークションに出せるようにしたらいいのになと思いますよ。

高梨　それが許されたらもっと幅が広がりますよね。オークションに出して、その金額でジュニアの子たちに違うジャンプ道具を買ってあげたり、競技の普及活動に生かすこともできる。本当にその方がいいですよ。

井本　パラの競技でも同じようなことを言っている選手がいました。どの競技もみんな思っていることなので、一度まとめて意見を上げてみましょうか。

高梨　何か変わるかもしれませんね。

井本　どんどん提案していきましょう。『JUMP for The Earth Project』の活動で今後考えていることはありますか？

高梨　昨年は白馬村にもお邪魔して、再生可能エネルギーでゲレンデを稼働させている仕組みを勉強したんです。住民の方々の意識もとても高かった。ゆくゆくは大会に必要なエネルギーを再生可能エネルギーで賄えるようになればいいなと思います。再生可能エネルギーでギャラリーバスを動かし、ジャンプ台を稼働させ、水を補給できる場所も作る。それが理想。不可能なことではないと思います。あとは、ジャンプ台のある蔵王の樹氷を守るために、植林の活動などもしていきたいですね。

井本　高梨さんにはこの勢いでどんどん突き進んでもらいたいし、私もお手伝いしていきます。『HEROs PLEDGE』の方もレベルを上げていきたい。気候変動は未来の話ではなく喫緊の課題。より本質的に、より社会変革につながるような活動をしていかなければと思います。