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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「イチローと松井秀喜…どちらが上か?」ファンの論争、不仲説まで…メジャーの取材記者が明かす“真相”「じつはアメリカでも“イチ松論争”あった」
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/23 11:00
イチローと松井秀喜。ナゾの不仲説もあった2人の関係とは
2003年4月29日、ヤンキースタジアムで行われたヤンキースとマリナーズ3連戦の初戦だった。ニューヨークという米国屈指の大都市で全米一の人気を誇るヤンキースの球場には普段から多くのメディアが集まるが、その日は日本のメディアも殺到し、大変な数になっていた。ヤンキースの球団広報がその日発行した取材パスは150枚にも上り、試合前のフィールドはメディア関係者で埋め尽くされ足の踏み場もなかった。それほど多くのメディアが集まるのは、メジャーではワールドシリーズかオールスターのような大舞台だけ。イチローと松井によるメジャー初のマッチアップは、それだけ特別なものだった。その日のニューヨーク・ポスト紙は「バトル・オブ・ジャパン」の大きな見出しで記事を掲載し、2人の対決を盛り上げていた。
試合前、当時ヤンキースを指揮していたジョー・トーリ監督も大勢の記者に囲まれ、2人の対決に絡んだ質問を次から次へと浴びていた。トーリ監督自身、メッツの選手だった1974年に日米野球で訪日したことがあり、日本の野球には造詣が深かった。この試合には長嶋茂雄氏も解説のために訪れており、トーリ監督は「日本でナガシマと対戦したのを覚えている。メジャーでいうとカル・リプケンのように国民的な人気があって、本当にファンから愛されていた。品格があり、チャーミングな選手だった」と思い出話まで披露していた。
2人はお互いをどう語ったか?
この日の主役となったイチローも松井も、クラブハウスでメディアに囲まれた。イチローは米国人記者たちに「ヤンキースと対戦するときはいつも特別な気持ちがある。松井がいてもいなくても、その感覚は変わらない。ただ、彼の野球に対する姿勢は真っすぐで誠実。いいシーズンを送れることを願っている」と話し、松井は試合後に「日本のファンのみなさんが楽しみにしていたと思います。僕自身は、試合中は特別な気持ちはなかったですね。いつも通りプレーしました。イチローさんが打席に入ったときとか、最後の打席のときは、やっぱり(いつもとは)違うのかなとは思いましたけど」と振り返った。過剰に意識することなく、それでも互いに敬意を表する。そんな思いが感じられるコメントだった。試合前の練習中には2人が握手を交わして談笑する姿もあり、それについて問われると松井は「軽い挨拶くらいです。お互いに頑張りましょうと。(イチローは)やっぱり、独特の雰囲気ですね。日本にいるときも、そうだったですけれど」と答えていた。