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「主人に申し訳ない」悩んだ妊活を45歳で“卒業”…元バレーボール日本代表・益子直美が語る“12歳差夫婦”の関係性「その言葉に救われました」 

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市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

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photograph byShiro Miyake

posted2025/01/11 11:03

「主人に申し訳ない」悩んだ妊活を45歳で“卒業”…元バレーボール日本代表・益子直美が語る“12歳差夫婦”の関係性「その言葉に救われました」<Number Web> photograph by Shiro Miyake

バレーボール日本代表として活躍した益子直美さん。プライベートでは、2006年に自転車ロードレーサーの山本雅道さんと結婚した

45歳の誕生日に、婦人体温計と薬を処分した

 そして45歳で不妊治療を卒業する決断を下した。5月20日の誕生日に婦人体温計と薬などを処分して一区切りをつけたという。

 神奈川に移り住んだのはその直後だった。

「何かこう、環境とか心境を変えたいという思いがあって、現在の自宅を買ってしまいましたけど、引っ越しをしてきて本当に良かったです。いろいろなしがらみを東京に置いてきましたし、いろいろな思いを湘南の風がすべて持ち去ってくれました。周囲に隠して不妊治療をしているときは、わたしは40歳を過ぎてるのにもかかわらず『お子さんは?』と聞かれることも多かった。主人が若かったからでしょうね、そういった周囲の言葉も負担でした。でも、不妊治療を終えたときに義理の母に『実は不妊治療していて、45歳の誕生日で卒業しました。孫を見せてあげられなくてすいません』と言ったところ、あっけらかんと『結婚したときから諦めてるわよ』って……。わたしの気持ちをラクにしようと思って言ってくれたんですよね。その言葉に救われました」

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 益子さんの不妊治療の経験は、子供たちに楽しくスポーツをしてほしいという信念をさらに後押しすることとなった。

「『監督が怒ってはいけない大会』を始めたのが2015年ですが、わたしが2011年まで不妊治療をしていたことが大きく影響していると思っています。子供を諦めたという経験をまだ引きずっていたと思うんですよね。だから子供が理不尽に怒られる姿を見たくないという思いは大きかったです」

子供たちがスポーツを楽しめる世界ために

 理想は大会をやめることだと、意外な答えが返ってきた。

「この大会が必要ないくらい、怒らないのが当たり前な世界になるのがわたしの願いです。子供たちがバレーボールやスポーツをする環境が整って、楽しくできる世の中が早く来てほしいですね。『もういいよ、益子、お疲れさま』と言われるのが1番の目標です」

 時代とともに求められる指導者の姿も徐々に変わっている。自分の指導方法は間違っていないか、子供たちから笑顔を奪っていないか、指導者を名乗る人には今一度、立ち止まって考えてほしい。日本から『監督が怒ってはいけない大会』がなくなるとき、勝利至上主義の価値観は塗り替えられているはずだと益子さんは希望を抱いている。理不尽なしごきや、暴力が一日も早く消え去るようこれからも活動していくつもりだ。《インタビュー第1回~第3回も公開中です》

(撮影=三宅史郎)

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「絶対に黙っていてください」隠した脱毛症…理不尽な指導に苦しんだ元バレー日本代表・益子直美が「監督が怒ってはいけない大会」にたどり着いた理由

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