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「主人に申し訳ない」悩んだ妊活を45歳で“卒業”…元バレーボール日本代表・益子直美が語る“12歳差夫婦”の関係性「その言葉に救われました」 

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市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

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photograph byShiro Miyake

posted2025/01/11 11:03

「主人に申し訳ない」悩んだ妊活を45歳で“卒業”…元バレーボール日本代表・益子直美が語る“12歳差夫婦”の関係性「その言葉に救われました」<Number Web> photograph by Shiro Miyake

バレーボール日本代表として活躍した益子直美さん。プライベートでは、2006年に自転車ロードレーサーの山本雅道さんと結婚した

「でも、やっぱり年齢が一回りも年下なので…」

 最初は友人として親交を深め、出会って2年経ったころから付き合うように。

「でも、やっぱり年齢が一回りも年下なので、結婚はないだろうって思っていましたね。それなのにプロポーズしてきて、びっくりしました。野球やサッカーなどいろいろな競技の選手を取材に行きましたけど、わたしに電話番号を聞いてくれた人なんか誰もいなかった。だから珍しかったんですよね。主人はグイグイ来るタイプで。わたしは子供のころの苦い体験もあって、自分からは行けない感じでした。無理だろう、まさかなってすぐに思ってしまうんです。だけど主人は本当に積極的に来てくれて、それはやはりうれしかったですね。イタリアでの競技生活で、女性がいたら『チャオ!』と声をかけないといけないと学んできただけ、と主人は言ってますが!(笑)」

 山本さんの積極性が引き金となり、益子さんが当初は気にかけていた年齢の差を乗り越えて結婚に至った。

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 性格は正反対。そして競技の特性のためか、指導されてきた方法も全く違い、山本さんの競技にまつわる話は新鮮だったという。

「わたしは怒られながら指導されましたが、主人は怒られたことがないんです。『自分が強くなりたい』と思って、自分で切り開いてきた主体性の人。自分で尊敬する先輩に連絡をしてコーチを依頼したり、イタリアやフランスなど、自転車競技が盛んな海外に行くにはどうしたらいいか考えて、方法を探すのも自分です。自分で全部、決めてきた人なので、全部、監督に言われた通りにしてきたわたしとは正反対。そういうところは本当に勉強になりますね」

 そんな風にベストコンビである2人だが、子供にはなかなか恵まれなかった。

「40歳で結婚して、42歳から本格的に妊活を始めたのですが、最初から『年齢のこともあるしそんなに長くやるものではないよね』と2人で話していて、3年やったら、そこでやめようって決めていました。それで45歳のときに妊活を卒業したんです」

「主人に申し訳ない…」悩んだ妊活

 定期的な通院や、かかる費用の高額さ。夫婦間の価値観によるすれ違いなど不妊治療には当事者にしかわからない悩みが多い。そして治療を公表する人も増えて、不妊治療に関する情報は昨今、巷に増え始めてはいるが、周りに公言しづらい雰囲気がいまだにあるのも事実である。

「何がつらいって、わたしは血液検査の結果を聞くのが1番つらかったですね。妊娠しやすいかどうかという結果が血液検査ではっきり出てしまうので。わたしの場合は排卵誘発剤の注射を打っても全然ダメでした。最初はタイミング法とかも試していたのですが、これはもう急がないといけない、もう顕微(授精)に移行しようということになって……。やはりわたしには時間がないんだなという現実をつきつけられました」

 担当の医師に「若い人は誘発剤を打つと何個ぐらい卵が取れるんですか?」と聞いたとき、自分との大きな差に驚き、落胆したと振り返る。

 顕微授精を2度、試したが益子さん夫妻の願いが叶うことはなかった。

「主人に申し訳なかったですね。主人は『頑張れ』という言葉は一切言わないし『やめたかったらやめてもいいから』と常に言ってくれて、とても協力的でした。毎月毎月、病院に行ってもダメで、かといって落ち込んだ顔をしたまま帰れないじゃないですか。通っていた産婦人科の横に高級ステーキ屋さんがあって、結果を聞いて落ち込んで、でもそこで3000円くらいのランチで肉を食べて元気をつけて帰る。毎月、そんな風に過ごしていました」

【次ページ】 45歳の誕生日に、婦人体温計と薬を処分した

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