格闘技PRESSBACK NUMBER
「久保の顔面が集団暴行を受けたかのように…」50発の滅多打ち、試合後には嘔吐も…RIZIN“凄惨マッチ”の是非「レフェリーが止めないから殴り続けた」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2025/01/04 18:19
グラウンドで強烈な鉄槌を打ち下ろすラジャブアリ・シェイドゥラエフ。久保優太の顔面は鮮血に染まっていった
「早く病院に行ってほしい」試合後の会見の様子
シェイドゥラエフが“ヤバい奴”であることは、MMA12戦全勝(全試合でKOまたは一本勝ち)というレコードや、武田光司とフアン・アーチュレッタという強豪に1ラウンドで勝利を収めていることからも明らかだった。
対する久保はGLORYとK-1の元王者。MMA転向当初こそルールにアジャストできず、デビュー戦となったシバターとのエキシビションマッチでは八百長疑惑をかけられるなど散々な目にあった。その後、キックボクシングの元王者という肩書きを捨て去るかのようにMMAの練習に没頭すると、2戦目からその成果が現れ、捲土重来の5連勝をマークした。
中でも直近の斎藤裕戦は出色の出来だった。元RIZINフェザー級王者が相手だけに「圧倒的に不利」という予想が多かったものの、そんな下馬評を嘲笑うかのように久保はスタンドで斎藤を追い詰め、最後はボディへのストレートキック(久保流の三日月蹴り)でKOした。
ADVERTISEMENT
12連勝中のシェイドゥラエフと、5連勝中の久保。勝った方がRIZINフェザー級王座に手をかける、事実上の挑戦者決定戦といった位置づけの重要な一戦だった。
37歳とは思えない童顔や、元妻でタレントのサラとの漫才のような会話から“ほんわか系”のイメージが強い久保だが、実際に歩いてきた道はまったく違う。キックボクサー時代から苦労を重ねており、カンボジアで試合をしたり、フリーランスになった当初は練習する場所にすら困った時期もあった。
MMAの世界で結果を残せたのはその挑戦が一過性のものではなく、真剣に時間と労力をかけて取り組んできたものだからだろう。シェイドゥラエフに勝てば、2025年にはタイトル挑戦――そんな久保の青写真を、キルギス人ファイターはハンマーのような攻撃で木っ端微塵に打ち砕いた。
試合後、インタビュースペースに現れた両者の姿はまさに対照的だった。勝者の顔には傷ひとつなかったが、敗者のそれは「質問を受けていないで、早く病院に行ってほしい」と思わせるほどボロボロで、無惨に腫れ上がっていた。