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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
150キロ超えの直球も「速いなんて思ったことなくて…」ベテラン記者が振り返る“巨人→オリオールズ移籍”菅野智之(35歳)の「最強大学生」時代
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/27 12:00
35歳でMLBオリオールズへの移籍が決まった巨人の菅野智之。大学時代からその姿を見続けたベテラン記者が振り返る当時の記憶は…?
手元でメモする原稿用紙が、文字でどんどん埋まっていく。
失礼な言い方かもしれないが、菅野投手ほど「起承転結」に沿ったメモしやすい話をしてくれる選手に、その後、出会えていない。
「いろんなことを考えながら、打者に向かって投げているのと、ただ漠然とキャッチャーのサインにうなずいて、キャッチャーに向かって投げるのじゃ、ぜんぜん違います。たとえば、相手ベンチを観察していれば、監督さんが打者に『左脇を絞めて打て』って指示が見えたりする。
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投手側の脇を絞めて打とうとすれば、右手が強くなって左手の自由が効きにくくなりますから、落ちる系はまず打てない。ならば、低めに落としておけば大丈夫とか。自分が主役になって相手チームを手玉に取る面白さっていうんですか。たまらないですよね」
球質へのこだわりも人一倍で、理想は、打者が振り始めてから動くボール。
「ストレートなら、(ホーム)ベースの上で加速を感じるやつで、変化球ならベースの上で曲がり始めるような。特にスライダーは」
「最後の最後で曲がる」スライダー
そのスライダーだ。
「スライダーいきます」で、「オッケー、カモン!」とミットを構えたら、ツーッと真っすぐに来て、もう曲がらないのかと捕りに行ったらそこから急に曲がり、プロテクターの右肩の所をパッコーンと直撃したから驚いた。
菅野さんのスライダー、最後の最後で曲がるんですよ。
横で、見届け人として立ち会ってくれていた伏見寅威捕手(現日本ハム)に、「先に言っとけばよかったですね」と申しわけなさそうにされてしまった。
その菅野智之投手は、その年のドラフト会議で日本ハムから1位指名された。だが、そのおよそ1カ月後に入団を断っている。様々な議論を生んだドラ1選手の「入団拒否」となったが、当時の喧騒を現場のスカウトはどう見ていたのだろうか?
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