甲子園の風BACK NUMBER
「インスタで活動紹介をはじめて…」“部員9人”だった大阪の公立進学校が「秋大会ベスト16」で21世紀枠候補に…甲子園出場21回“古豪”の現在地
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沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2024/12/11 06:00

春夏あわせ21度の甲子園出場を誇る「大阪公立校の雄」市岡高校だが、近年は部員不足に悩み一時は9人まで減った。その苦境から府大会ベスト16まで復活できたワケは?
少子化、スポーツの多様化など要因は様々だが、野口監督は極端に減っていく新入部員の人数をこう分析していた。
「入ってくる部員の層が変わった気はします。昔みたいに野球をやっていたから高校でも、というガツガツした子は減りました。硬式野球部に入部しても軟式へ行ってしまう子もいますからね」
市岡高校は大阪大など難関大へ進む生徒もいる進学校ということもあり、勉強と野球を両立する上で何を目指していくかを明確にしなければならない。さらに、限られた練習スペース、7限の授業後から数時間という練習時間。その中でいかに効率良く力をつけられるか。指揮官も彼らの練習意欲を掻き立てるためにありとあらゆる策を講じてきた。
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「特別なことはしていません。ただ、8年前に監督に就任した頃と比べると、考え方というか指導方針は少しずつ変わってはきていると思います。もっと前ならこちらがガツガツと引き上げにかかっていましたけれど、今は歩み寄りながら彼らに考える時間を与えたりしながらメニューの中にドリルを作ることもあります」
「勉強は継続してやれる。だから野球でもできるはず」
最も痛感しているのは近年の子どもに薄れがちな“根気”だ。
「長い時間、同じメニューを続けると集中力が切れがちなので、細かく練習を分けながらやらないと続けられない。ですので、メニューを小分けしながら練習しています。
継続して同じことをすることが苦手でも、続けることは大事。飽きさせないように、こちらも工夫しながら指導しています。でも……この子らは勉強は継続してやれるんですよね。だから野球でもできるはず。話を聞く力も持っているので、そのあたりを持って指導していけたらと思っています」
大学でも野球に携わりたいという目標を持っている部員は多く「特にアマチュア野球界の指導に携わる人材育成ができたらと思っています」と指揮官は密かに願っている。