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「ドライバーとして完璧だった」ライバルも認める“最速マシン”じゃなくても速いフェルスタッペンの異次元の強さ
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2024/11/29 11:00
苦渋の表情を見せることが多かった今季のフェルスタッペンだが、4連覇を達成したこの日ばかりは笑顔があふれた
レッドブルも22年と23年にコンストラクターズ選手権を制している。だが、今年は状況が大きく変わった。タイトルを確定させたラスベガスGP時点でコンストラクターズ選手権で3位のチームだったからだ。フェルスタッペンもこう語る。
「今年は序盤を除けば、僕たちのクルマは最速ではなかった。シーズン全体の70%は最速のマシンではなかったのにライバルたちに急激に差を縮められることなく、逆に終盤に広げて2戦を残してタイトルを確定させることができた。それが僕がこのタイトルを誇りに感じている理由だ」
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表もその事実を認める。
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「われわれにとって、今シーズンのターニングポイントはマイアミGPだったと思う。あの週末から、われわれのマシンはとてもドライビングしにくいものとなり、開発も迷路に入ってしまった」
マイアミGPは6戦目。レッドブルは開幕5戦で4勝してチャンピオンシップのリーダーとなっていたものの、そのレースでノリスがF1初優勝を遂げると形勢が徐々に逆転していく。フェルスタッペンは10戦目のスペインGPを最後に表彰台の頂点から遠のき、16戦目のイタリアGPで6位と惨敗したとき、ホーナーは「これでもうチャンピオンシップは手からこぼれ落ちていくかもしれない」と覚悟を決めたという。
F1ドライバーの強さとは
続く17戦目のアゼルバイジャンGPで、レッドブルはマクラーレンにコンストラクターズ選手権で逆転され、首位陥落。20戦目のメキシコGPではフェラーリにもコンストラクターズ選手権で先行を許し、19年以来のコンストラクターズ選手権3位に降格することとなった。
ところが、ドライバーズ選手権ではフェルスタッペンが首位を維持していた。そこには相手チームの戦略ミスやドライバーのパフォーマンス不足もあったが、フェルスタッペンのドライバーとしての突出した能力の高さがあったことを忘れてはならない。フェルスタッペンはこう述懐する。
「勝利から遠ざかっていたときは本当に苦しかった。でも、絶対に諦めなかった。僕が諦めたら、そこで終わる。優勝できなくても、常に最大限の結果を残すことを心がけた。それでチームも一丸となって戦うことができたと思う」