F1ピットストップBACK NUMBER
「ドライバーとして完璧だった」ライバルも認める“最速マシン”じゃなくても速いフェルスタッペンの異次元の強さ
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2024/11/29 11:00
苦渋の表情を見せることが多かった今季のフェルスタッペンだが、4連覇を達成したこの日ばかりは笑顔があふれた
タイトルを決めたラスベガスGPでもレッドブルは最速ではなく、初日のFP2でフェルスタッペンは17番手に終わっていた。予選ではなんとか立て直して5番手まで復調。レースでは優勝を目標に掲げず、チャンピオンシップの確定を最優先し、1つ後ろのポジションからスタートするノリスのペースを見ながら、先着することだけを心がけた。
結果的にこのレースでフェルスタッペンの後塵を拝し続け、シーズンを通しても数々のバトルを演じたノリスは、チャンピオンをこう称える。
「マックスの強さは苦しい状況でもミスを犯さないこと。最速のマシンを手にすればレースを支配し、最速のマシンでなくても確実にポイントを稼いだ。シーズンを通して悪いレースは一度もなく、ドライバーとして完璧だった。マックスは現在、世界最高のドライバーであり、おそらくF1史上最高のドライバーの一人だろう」
最速王者のベストレース
ADVERTISEMENT
シーズンは残り2戦。レッドブルがコンストラクターズ選手権で浮上する可能性はまだ残されている。しかし、少なくともラスベガスGP時点で3番目に速いチームでしかなかったことは間違いない。ラスベガスGPで見たフェルスタッペンの走りが、これまでの4連覇を達成したドライバーとは異なる輝きを発していたように見えたのはそのためだ。
フェルスタッペンはこう言う。
「おそらく20年後、僕が引退したとき、このラスベガスGPを僕のベストレースの10選に選ぶ人はいないと思う。でも、タイトルを勝ち取ったこのレースは、僕にとってこれまでのどのレースとも異なる特別なものだ」
最速ではないマシンで4連覇を達成した史上初のチャンピオン。フェルスタッペンと同じ時代にいることに感謝したい。