格闘技PRESSBACK NUMBER
「パパとママの恋愛話を聞いて、いいなって」田中きずなの結婚願望に父・田中稔は「チャラい奴だったらぶっ飛ばす」娘が見た、プロレス夫婦の関係性
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byL)Essei Hara、R)Takuya Sugiyama
posted2024/11/22 11:22
マリーゴールド所属の女子プロレスラー・田中きずな(19歳)のインタビュー最終回
「(両親は)理想の夫婦ですよ」
――お父さんは若いころから業界内で、真面目で一生懸命で有名でしたよ。
田中 ほんとに遊ばないんですよ。空いてる時間は練習するか、自分の試合を観るか、私たちと遊んでくれるかっていうことしかしなくて。お酒を飲めないのもあるんですけど、飲み会にも行かないし、試合が終わったらまっすぐ家に帰ってきてくれて、みんなでごはんを食べて。友達と休みの日を過ごすとか、そういうのもなく、ずっと家族を一番に考えてくれてる。
――将来は、そんなタイプの彼氏が欲しいですか。
田中 はい。お父さんのことは、選手としても人としても尊敬してるので。昔、友達から「結婚する人は父親に似てる人を選ぶらしいよ」みたいな話を聞いたことがあって、確かに、私はほんとにお父さんのことが好きだから、そういうことはあるなと思ったんですけど。理想の夫婦ですよ。2人で昔のプロレスの話を、いっつも楽しそうにしてるんですよ。すごい楽しかったんだろうなって思いますね。付き合ってた当時のこととか、お互いの試合を観に行ってたとか、そういう話をよくしてるんで。
“2世レスラー”の葛藤…「恩返ししていくためにも」
――プロレスファミリーとしては最上級の形ですけど、一方では2世レスラーと呼ばれる葛藤やプレッシャーもあるんでしょうね。
田中 何をしても親と比べられるし、親の名前がついてくるのはプラスでもあるけど、やっぱりプレッシャーのほうが正直大きくて。入団しますっていう発表をしたときから、DMとかがたくさん来ました。「2世はダメだ」とか、「親の顔に泥を塗るな」とか。まだ何もはじまってもないのにって思ったし、それまでは味方だと思ってた人が、親のいるときといないときで態度がまるで変わったり。そういうのもやっぱり、親には言えないんですよね。友達にもそんな話はできないし、1人で抱えなきゃだったので、しんどいなぁと思ったこともありました。
――そういうときは誰かに頼ったほうがいいですよ。
田中 お父さんから言われたのは、「最初は田中稔の娘って言われることが多いと思うけど、田中きずなの父親が田中稔なんだって言われる選手になれ」って。お母さんみたいになりたい、お父さんみたいになりたいじゃなく、1人のレスラーとして見てもらえるようにっていう気持ちがすごくあるし、だから、絶対に親には甘えないっていうのは、もうほんとに思っていて。2人の娘で良かったって思う気持ちではいるんですけど、2世も大変だよっていうのも、それはほんとにありましたよね。
――マリーゴールドに移ったことで、批判の声も耳にしたと思いますが。
田中 デビューして1年ぐらいは、「応援してくれてる人は全員、私の親のファンなんじゃないか」とか、いろんな葛藤があったんですけど、マリーゴールドで復帰して、サイン会でwaveのころからのファンの方がすごいたくさん来てくれて。「どこに行っても関係なく応援してるから」とか言ってくださって、ママとパパのファンじゃなくて、私のことを応援してくれてたんだってやっと気づけて。すごくうれしかったから、そういう人たちに恩返ししていくためにもがんばらなきゃって、いまは思ってます。《インタビュー第1回、第2回も公開中です》
(撮影=杉山拓也)