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青学大・原晋監督がぼやいた「まさかの3位よ。びっくりしたなあ、もう」箱根駅伝まで2カ月、青学大の誤算「差がついたのは『中間層』」「やりますよ、箱根は」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/11/05 19:26
11月3日の全日本大学駅伝。3位でフィニッシュする青学大アンカーの塩出翔太(3年)
国学院は5区で野中恒亨(2年)、6区に山本歩夢(4年)を配置、両者が区間賞を獲得し、6区終了時点で首位青山学院とはわずか4秒差、手を伸ばせば届く位置にまで差を縮めた。
では、青山学院の出来が悪かったかというと、そんなことはない。5区を走ったキャプテンの田中悠登(4年)、6区の白石光星(4年)は、田中が区間4位、白石にいたっては区間2位の好走。しかし、この2区間で国学院に背中を捉えられ、守勢に回らざるを得なかった。
出雲、全日本で画期的だったのは、優勝した国学院大の前田康弘監督が、「後半型」のオーダーを組み、逆転に成功したことだ。
出雲では4区から6区まで区間賞、全日本では従来、「つなぎ区間」と見られてきた5区、6区に実力者を投入し、大きな戦果を収めた。原監督は言う。
「今回のレースは、ものすごく勉強になります。ウチだってエースは負けてない。2区の鶴川、4区の黒田、それに7区で区間2位の太田(蒼生・4年)は、他校のエースと十分に戦える存在です。差が出たのは、5区、6区に象徴されるように、『中間層』だよね」
中間層。俗にチームで5番手前後の選手たちのことを指す。ここでの差が勝敗に直結した。
国学院の“奇策”…その正体とは?
原監督の発言を読み解いてみる。
これまでの「文法」に則って考えれば、この日の全日本であれば、4区で黒田が大差をつけた時点で勝ったはずだった。青山学院というチームは「先行者利益」を最大限に発揮できる学校であり、全日本の場合であれば、「つなぎ」の5区、6区は選手層の厚さで相対的には強みを出しやすい区間だった。
ところが、今回はここで国学院に一気に差を詰められ、貯金を使い果たした。
なぜか?
国学院の前田監督は、後半型のオーダーを組むことで、各区間での「真っ向勝負」を微妙にかわした。