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藤井聡太22歳は「タイトル戦4年で不戦敗なし」ただ出産前の福間香奈女流五冠が…元A級棋士が見る“棋士の休場”「大山康晴名人は鉄人だった」
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2024/11/07 06:00
第37期竜王戦第3局。藤井聡太竜王・名人(左)は初タイトル挑戦の4年間で“不戦敗なし”である
福間は来年2月の休場明けに日程を変えて対局できるように、将棋連盟に調整を求めた。連盟と福間は代理人の弁護士をともに立てて協議した。ただ調整は難航した。現実問題として、すでに休場明けの2カ月間に15局以上もの対局が予定されている。さらに女流タイトル戦の年間スケジュールは決まっていて、対局日程を先送りすると次期の開催やほかの棋戦に影響が出る。
将棋連盟は10月25日、「対局の日程調整が難しく延期はできない」旨の発表をした。
これによって白玲戦は第5局に続いて第6局も福間女流五冠の不戦敗となり、西山白玲が4勝2敗で防衛した。女流王将戦の第2局と第3局も福間の不戦敗となり、西山女流王将が2勝1敗で防衛した。
なお、福間が保持している女流王座戦は、来年の2月下旬に第2局が行われることになった。福間倉敷藤花に伊藤沙恵女流四段(31)が挑戦する大山名人杯第32期倉敷藤花三番勝負は、11月5日に開幕予定だったが来年2月以降に延期となった。
対局規定にある“体調不良”の原則とは
女流棋士が出産のために公式戦を休場した例はほかにもあり、その期間は3カ月から半年が一般的。該当する対局は不戦敗となる。しかし、タイトル戦に出場し続けている福間女流五冠の場合、不戦敗の影響はとても大きい。将棋連盟は、女流棋士が妊娠や出産による不利益を被らないように、新たなルール作りを検討するという。
将棋連盟が定める対局規定には、「対局者の健康状態によって対局を行えない場合は、その対局を不戦敗とする」という条文がある。健康管理も勝負のうちというのが原則だ。それ以降の対局については、棋戦進行上の不都合がなければ延期が認められる。
2020年から新型コロナウィルスが世界的に蔓延し、数多くの病死者や罹患者が出た。それは将棋の対局規定にも影響を及ぼしている。前記の不戦敗の条文に「感染症に罹患した場合を除く」という補足事項が加わった。
つまり、一般的な体調不良は不戦敗となるが、感染症の疑いがある症状では対局延期が認められる可能性がある。以前にあるタイトル戦で、感染症にかかった棋士が不戦敗を避けるために対局した例があり、周囲の人たちに感染のおそれが生じた。そうした事態を防ぐためだ。
藤井七冠はタイトル戦、4年間休場なし
棋士がコロナウィルスやインフルエンザなどの感染症にかかった場合、対局の2日前までに将棋連盟に連絡すれば、原則として不戦敗とならず対局延期が認められる。前日や当日だと不戦敗になりかねない。