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野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
「多くの人からバカじゃねえかと言われましたけど…」“ベイスターズの故郷”山口県下関で「ファンのための豚丼屋」を開いた「ある熱狂的ファン」の話
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2024/10/30 17:06
ベイスターズの「故郷」下関出身のプロレスラーが地元に開いた豚丼屋「B☆WHALE」。少しずつファンの聖地へと近づいている
ところがである。オープンこそロケットスタートを切ったと思ったのも束の間。開幕して1カ月も経たないうちに、15年前にハマスタに居た閑古鳥が自分の店に居ついてしまっていた。
原因はいくつかあった。
全体的に夜が早めで、繁華街から離れているということもあるが、最大の原因は「何の店かわからない」ということであろう。WHALEと名乗っているのに、豚丼の店だ。関門海峡に臨む高級ラウンジのような素晴らしいロケーションながら、店中にはそれを相殺するように、ユニフォームやベイスターズグッズが展示され、中央にはマルハのどでかい大漁旗が鎮座。
店主は「やるぞ大洋勝利花」とか軍歌みたいな鼻歌を歌っている。「噂では長州小力とアントニオ小猪木が試合をやっていたらしい」という謎情報も混乱に拍車をかけ、店の階段からは毎日のようにクジラ料理を食べに来た外国人観光客が、何人も首を傾げて帰っていくという謎の店になっていた。
それでもヤングは諦めなかった。いや、諦めさせてくれなかった。
幸いなことに豚丼を食べた人の多くはリピーターになってくれたし、アルバイトの若い子たちも頑張ってくれている。そして何より、噂を聞きつけた下関の大洋ファンやマルハニチロ、林兼商店の関係者が、この店を訪れ、「ありがとう。がんばってほしい」と応援してくれるのだ。
店に集まり始めた「お宝モノ」のホエールズグッズ
さらには、自分たちが家に保管していたお宝モノの大洋ホエールズグッズを「ここに置いてほしい」と寄贈もしてくれた。店はさながら大洋ホエールズ博物館となり、おそらく世界に7つあるという中部一族の銅像も2つ集まった。すべて集まるとクジラの神様が出てきて下関で公式戦が開催されるんじゃないかとヤングは思っている。
「最初は地下組織ぐらいの感じでいいやとも思っていたんですよ。原価計算とかも間違えていましたし。でも、いろんな人の期待とか、ホエールズやベイスターズへの想いを聞いて、ちゃんとやらないとダメだと、いつの間にか背負ってしまった感じがあります(笑)」