プロ野球PRESSBACK NUMBER
ドラフト指名されなかった君へ「2度指名漏れから1位」ヤクルト・吉村貢司郎の金言…「悔しさを生かすも殺すも自分次第」「諦め悪いですね(笑)」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/25 11:01
“3度目の正直”で夢をかなえた吉村。だが意外にも指名の瞬間には食堂で食事をしていたとか
目標達成シートの中央に「ドラフト1位」
大谷翔平(現ドジャース)が活用していたことで有名な目標達成シート「曼荼羅チャート」の中心のマスに、「プロ入り」ではなく「ドラフト1位」と書き込んだ。それを現実のものにするために、どんな数字を目指すのか、そのために取り組むべきことは何か。
「一番変わったのは意識の面です。トレーニングや栄養の勉強もしましたし、何より野球の考え方、ピッチングに対する意識ですかね。データや配球を深掘りするようになったり、ブルペンの投球練習から1球ずつ試合の流れを想定して投げたり、どう配球するのか考えながら取り組むようになりました」
当時の東芝野球部はピッチング練習が特に厳しく、漫然と球数を投げ込むような雰囲気は皆無。1球1球、頭をフル回転させることが求められたという。
「真っ直ぐを投げた後、変化球をどんな風に投げるのか。真っ直ぐが狙いとは違う場所に行ったとしたら、それを活かすために次の球はどう投げればいいのか。キャッチャーの方からも色々とアドバイスをいただいて、バッターが嫌だと思うことは何なのか考えながら投球できるようになりました。自分が成長する上で大切な時間になったと思います」
ヤクルト相手の快投で“3度目の正直”を引き寄せる
2022年ドラフト会議を前にした10月6日。吉村は自らの投球で運命を切り拓く。同年セ・リーグを制したヤクルトが、クライマックス・シリーズまでの調整のために組んだ東芝との練習試合に先発。この年日本人選手最多のシーズン56本塁打を放った村上宗隆を空振り三振に仕留めるなど、3回3安打無失点、7奪三振の快投を見せた。
この投球が決め手となり、ヤクルトは吉村の1位指名を決定。ドラフト会議前日に、高津臣吾監督がそれを公表したため、“3度目の正直”の瞬間は運命の日を待たずにやってきたのだ。当日は前回と同じく、寮の食堂で夕飯を食べながら中継を見守った。
「東京ヤクルトスワローズ1巡目指名選手、吉村貢司郎」。アナウンスと同時に、チームメートから祝福の声が飛ぶ。別室の記者会見場に向かうと、3年前のあの日は“解散”していった報道陣がカメラを向けて待ち構えていた。