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ドラフト指名されなかった君へ「2度指名漏れから1位」ヤクルト・吉村貢司郎の金言…「悔しさを生かすも殺すも自分次第」「諦め悪いですね(笑)」
posted2024/10/25 11:01
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
JIJI PRESS
2019年10月17日。吉村は横浜市の國學院大学の施設でテレビ中継を見つめていた。最前列で肩を並べていたのは、いずれもプロ志望届を出していた横山楓(現オリックス)ら投手2人、野手2人のチームメート、そして吉村。後ろには野球部員が顔を揃え、集まった記者やカメラマンと共に、歓喜の瞬間を今や遅しと待ち構えていた。
佐々木朗希(ロッテ)、奥川恭伸(ヤクルト)、宮城大弥(オリックス)……。「黄金世代」の高卒投手たちが1巡目で華々しく名前を呼ばれ、ウェーバー方式となる2巡目、3巡目は粛々と各球団の指名が続いていく。
4巡目、5巡目を過ぎても吉村の名前はない。育成指名も含め計107人の名前が上がったところで残ったのは「指名漏れ」という現実。吉村だけではない。指名を待っていた同じ4年生の5人は誰一人、名前を呼ばれなかった。
気まずくはなかったけれど、申し訳なくて
「気持ちよく、全員呼ばれなかったですね。だから、逆に気まずくはなかったです。記者も結構集まっていましたが、バラバラと帰って行きました。申し訳なかったですよね。せっかく来てくれたのに」
吉村自身、そこまで大きな落胆はなかった。秋のリーグ戦直前に、右肩に違和感を覚えていた。ドラフト直前という焦りやチームの状況を考えて騙し騙し登板はしていたものの、痛みは消えていなかった。
「若干の期待はありました。調査書は何球団かいただいていましたし、プロに行きたいという思いもありました。でも全然アピールできていなかったので本当に難しいだろうなとは思っていて……色々な気持ちがありましたね」
前年の2018年ドラフトでは1学年上の清水昇がヤクルトから1位指名を受けていた。1年秋からエースの重責を担い、通算43試合に登板。大学日本代表にも選ばれていた右腕の姿を見ていただけに、自分に足りないものを痛感していた。
「清水さんは何でも出来て1つ1つ全てが他とは違う、という存在でしたけど、僕は器用でもないしセンスもない。コントロールも悪かったし、スピードもそこまで速くない。全てにおいて成長しなければ、上位で指名なんてかからないと自分でも思っていました。そのために、圧倒的な成績を残さないといけない、って」