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“大谷翔平が脇役”に…「ダルビッシュ有vs大谷ベッツは12打数0安打」「山本由伸は“同じ失敗を2度しない”」日本のエース初対決成績が美しい
posted2024/10/13 11:04
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nicole Vasquez/Getty Images
ダルのMLB挑戦1年目、中2だった由伸が…
NPBのトップ選手がMLBに移籍するのが当たり前になってから、「浦島太郎」みたいな現象が起こるようになった。日本の若手選手にとっては「子供時代に見たスター選手」が、ある日突然目の前に登場して、試合で対戦するような現象だ。
2019年、イチローは3月21日、東京ドームでのMLB開幕戦を最後に引退したが、それに先立つ3月17日に行われた巨人とのプレシーズンマッチで、イチローは遥かに若い選手たちと対戦した。イチローがMLBに挑戦した2001年当時、プロにいた選手は皆無。先発した今村信貴はまだ7歳だった。巨人の選手は「子供の頃、憧れのヒーローだった」選手と、夢見心地で対戦したのだ。
現地2024年10月11日、パドレスのダルビッシュ有とドジャースの山本由伸の初の投げ合いも、それに近かった。
ダルビッシュは1986年生まれ、山本は1998年生まれ、誕生日はダルビッシュが8月16日、山本が8月17日と1日違いだが、一回りの年齢差がある。ダルビッシュがMLB挑戦を表明した2011年オフ、山本由伸はまだ岡山県備前市立備前中学の2年生だった。
ダルビッシュと対戦したパ・リーグの選手のうち、山本とも対戦したのは西武の中村剛也、栗山巧、浅村栄斗(現楽天)など数えるほどになっている。
今季、ポスティングでドジャースに移籍した山本だが、ダルビッシュとの接点は2023年の第5回WBCで生まれた。宮崎でのキャンプで、ダルビッシュから「弾道計測器トラックマンでのデータの見方」を伝授された。MLB移籍前に、何よりのプレゼントになったはずだ。
同じナショナル・リーグ西地区ながら、山本もダルビッシュも戦線離脱した時期があっただけに、両者のシーズン中の対戦はなかった。
ポストシーズンでも先発で投げあう機会はここまでなかったが、ついにこの日、ダルビッシュと山本由伸による、史上初の「ポストシーズンでの日本人投手同士の投げ合い」が実現したのだ。
山本由伸がマウンドに上がると、登場曲のVINAI「Frontier (Extended Mix)」が流れる。そしてプレーボールから、2人の鮮やかな投げ合いが始まった。各打者の打席結果と球種、要した球数とともにイニングごとに振り返っていこう。
1回:由伸は三者凡退、ダルは大谷、ベッツ斬り
《1回》
【山本】
アラエズ:一ゴロ(カーブ)4球
タティースJr.:空振り三振(スライダー)4球
プロファー:二ゴロ(フォーシーム)2球
先頭の3年連続首位打者アラエズをフォーシームで追いこんで打ち取った一ゴロでは、落ち着いて一塁にカバーリングを見せ、タティースJr.はキレキレのスライダーで三振に斬った。速球中心の組み立てで前回打たれたスプリットは投げなかった。わずか10球、ストライク8球を投じた。
その裏、「(先発するのは)僕しかいないんで」と記者会見で語っていたダルビッシュは、ゆったりとマウンドへ上がった。