フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「お客さんをヒヤッとさせたくて…」解禁“バックフリップ”を跳んだ世界王者の本音…「彼はさらに上手くなった」マリニンが挙げた日本選手の名前
posted2024/10/13 17:01
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
AFLO
今季のGP初戦スケートアメリカを間近に控えた10月8日、2024年世界チャンピオン、イリア・マリニンが事前ZOOM記者会見を行った。マリニンは9月にイタリアでチャレンジャーシリーズのロンバルディア杯に出場。フリーでは今季から試合で演じることが解禁されたバックフリップを初披露し、優勝をきめた。
「お客さんをヒヤッとさせたくて」
いつからバックフリップの練習を開始し、どのくらいでマスターしたのか。そう聞かれたマリニンはこう語りはじめた。
「実はバックフリップはエンタテイメント要素としてアイスショーで見せたいと思って、以前から練習をしていたんです。たまたま今季から、アダム(・シャオ・イム・ファ)のおかげで試合で許可されることになり、プログラムに入れたらカッコいいかな、と。お客さんをちょっとヒヤッとさせて、それまでになかった雰囲気を醸し出せたらと思いました」
マリニンがそう語ったように、ISUが禁止技だったバックフリップを解禁するに至ったきっかけは、2024年世界銅メダリスト、フランスのアダム・シャオ・イム・ファが昨シーズン、2ポイントの減点を承知でバックフリップを試合で演じ続けたことだった。
「練習をはじめたのは1年前くらいでしたけど、今季からルールで解禁されたのでやったみたいなタイミングになってしまったのは、ちょっと残念でした」と説明するマリニン。スケートアメリカでもプログラムに入れる予定をしているという。
バックフリップが解禁になった理由
技の危険性や氷へのダメージ、また本来のフィギュアスケートからかけ離れたものになるという懸念の声も聞かれた中でISUが解禁に踏み切ったのは、エンタテイメント的な要素を考慮してのことだろう。シャオ・イム・ファがモントリオール世界選手権で演じた時、観客が熱狂的に反応したのを現場にいたすべてのISU関係者が目撃していた。フィギュアスケートに少しでも新しいファン層をとりこんでいきたいという意図があったのに違いない。
もっともバックフリップには、技としての持ち点はない。あくまでもコレオステップなどの最中に盛り込む動きの選択の一つとして承認された。だからこれからはこれを入れなくては勝てないという状況にはならないが、タイミングよくきめれば会場を沸かせてGOEやコンポーネンツのプラスにつながる要素であることは間違いない。