フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「お客さんをヒヤッとさせたくて…」解禁“バックフリップ”を跳んだ世界王者の本音…「彼はさらに上手くなった」マリニンが挙げた日本選手の名前
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAFLO
posted2024/10/13 17:01
ロンバルディア杯SPでのイリア・マリニン
「もし失敗したら…と何度もためらいました」
「僕は3歳から8歳くらいまで体操をやっていたので、床の上では問題なくできていたんです。でも氷の上でやろうとなったとき、最初はサポート付きでやってみたら簡単だった。でもいざサポートをとったら『もし失敗したら……』と何度も思いきれずにためらいました。初めて成功したのはこの夏のサンヴァレー(アイダホ州の避暑地で毎年アイスショーが開催される)で、偶然ですがネイサン(・チェン)も(ショーで)初めてバックフリップをやったところなので、最高の気分でした」
バックフリップは、体力的にどのくらい負担なのか。そう聞かれるとマリニンは「4回転ジャンプと同じくらい、プレッシャーがあります」と答えた。ロンバルディア杯では4度の4回転と、2度の3アクセルを含む3回転を合計6回成功させた後にバックフリップを跳んだ。現在19歳の彼の身体能力は驚異的と言うしかない。この大会では4アクセルには挑まなかったが、2位の鍵山優真に20ポイント以上の点差をつけた。
「彼は以前よりもさらに…」マリニンが挙げた日本人の名前
圧倒的な強さを見せているマリニンだが、オリンピックの前年シーズンである今季、特にライバル視している選手は誰かと聞いてみた。
「これは以前からそうなのですが、誰がライバルなのか、誰かに勝てるだろうかという心配よりも、自分の能力が十分でなかったらどうしよう、実力を発揮できなかったらどうしよう、という恐怖を克服することに集中してきました。だから戦う相手は自分なんです」そう言いながらも、こう続けた。
「でも一般的なことを言えば、今季のユマ(鍵山優真)のプログラムが大好き。彼は以前よりもさらに上手くなったなと思いました。だからまたシーズン後半で試合で顔を合わせるのが楽しみです。またアダムのプログラムもすごく良いと聞いているので、彼らと競うのをとても楽しみにしています」
この夏一番楽しかったことを聞かれると、日本で「ドリーム・オン・アイス」に出演して、若手も含めた日本選手たちの新しいプログラムを見ることができたことと答えた。