バレーボールPRESSBACK NUMBER

女子バレー“出産後の現役復帰”先駆けだった選手の苦悩「やめたいと思うことは何度もあった」佐伯美香はなぜ、それでもビーチバレーに戻ったか?

posted2025/09/06 11:03

 
女子バレー“出産後の現役復帰”先駆けだった選手の苦悩「やめたいと思うことは何度もあった」佐伯美香はなぜ、それでもビーチバレーに戻ったか?<Number Web> photograph by NumberWeb

インタビューに答える現在の佐伯美香さん

text by

吉田亜衣

吉田亜衣Ai Yoshida

PROFILE

photograph by

NumberWeb

女子バレー全日本のエースとして活躍し、ビーチバレー界のパイオニアとなった佐伯美香さん(53歳)。五輪3大会に出場した現役時代の秘話や苦悩、指導者として活動する今などを聞いた。《NumberWebインタビュー全4回の3回目/第4回に続く

◆◆◆

アスリートで指導者、そして母親

 2000年のシドニー五輪ビーチバレー競技で4位入賞を果たした佐伯美香は、翌年に結婚。2002年に第1子を出産した。結婚、出産については引退後の人生プランとして決めていた。

「現役を終えたら、“あの練習”をするのはもういいや、と思っていたので、復帰することは考えていませんでした。シドニー五輪をきっかけにビーチバレーのことを世の中が知ってくれたので、このタイミングで指導者になりたいと思っていました。出産後は、ダイキの屋内ビーチバレーコートでスクールを開講させてもらいました」

ADVERTISEMENT

 ただ、心のどこかでオリンピックのコートに置いてきた“忘れ物”の存在に気づいていた。

「自分の目標だった五輪、結婚、出産をすべて叶えた後、メダルまであと一歩やったんよなっていう気持ちが生まれてきて。うちの旦那がだったら現役復帰してみたらどうやぁと。産後いつまでも太っている私を見て、『俺はデブとは結婚した覚えはない』と言われて(笑)」

 家族の後押しで復帰を決意した。生後5カ月の子どもを託児所に預け、自身の練習、ビーチバレースクールでの指導、母親という三足のわらじを履いた生活をスタートさせた。

「最初は練習中、子どものことが気になるし、託児所に迎えに行ったら目が開かないほど泣いてる子どもを見て、こんなつらい思いさせてまで自分がやりたいことやっていいんかな……という思いもありましたね。やっぱりしばらくは練習に集中できないときもありました。でも、子どもが託児所に慣れてきて、それは時間が解決してくれた。自分の中でちゃんと区切りがつけられるようになってきました」

【次ページ】 独身時代との“決定的な違い”

1 2 3 NEXT
#佐伯美香
#ユニチカ

バレーボールの前後の記事

ページトップ