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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
井上尚弥と“生涯無敗”リカルド・ロペスの共通点とは? 大橋秀行が肌で感じた“最強の条件”「負けたら終わり、命をかける…その考えがない」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by(L)Takuya Sugiyama/(R)Getty Images
posted2024/10/04 17:29
28戦28勝(25KO)の井上尚弥と、52戦51勝(38KO)1分のリカルド・ロペス。ボクシング史に名を残す傑物たちの共通点とは
ロペスも同じだという。
「(戦い続ける理由は)お金でもないんですよ。お金じゃないからこれだけ稼いでもモチベーションが落ちたり、燃え尽きたりしない。普通は何度も防衛したら気持ち的にダメになっちゃうじゃないですか。そこが他のチャンピオンとは違います。試合前、緊張しないんですよ。本当に楽しんでいる。ロペスさんも井上と一緒。だから21回も防衛できたと思いますよ」
最後の防衛戦も8回KO勝ち…なぜ引退を決めたのか
2人ともボクシングを心から愛し、少しでも強くなりたい一心で練習を続けた。どれだけ練習しても新しい課題は見つかり、無双状態になっても100点満点という試合はなく、それを乗り越えることがモチベーションにつながった。勝ち続ければ新しい景色も見えてくる。新しいチャンスを手にすることもできる。成功の秘訣を問われたロペスは次のように答えた。
「私が21回防衛できたのは、お金のためではなく、自らの名誉のために戦っていたからです。お金を手にすると、人間はどうしてもおかしくなりがち。薬物やアルコールに手を出す人も多い。私は神に祈りながら自分を律していました」
ロペスのラストファイトは2001年9月29日、IBFライトフライ級タイトルマッチでゾラニ・ペテロを8回KOで下し、同王座の2度目の防衛を成功させた。ロペスは当時を振り返り、「もうスピードがなくなっていた。私が35歳で相手が26歳。対戦相手のスピードについていけないと思って引退を決意しました」と明かした。
こうしてロペスは世界チャンピオンのまま、まだ一線で戦える力が十分にありながら、思うようなボクシングができなくなったことで引退を決断した。同じく負け知らずの井上もいつかはリングを去るときがくるだろう。スターからスターへ。そのバトンは常に新しい世代に受け継がれていく。
<前編とあわせてお読みください>