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井上尚弥と“生涯無敗”リカルド・ロペスの共通点とは? 大橋秀行が肌で感じた“最強の条件”「負けたら終わり、命をかける…その考えがない」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by(L)Takuya Sugiyama/(R)Getty Images
posted2024/10/04 17:29
28戦28勝(25KO)の井上尚弥と、52戦51勝(38KO)1分のリカルド・ロペス。ボクシング史に名を残す傑物たちの共通点とは
ロペスに聞いた「井上尚弥が無敗でいるためには?」
その象徴とも言える試合が2014年9月のWBCフライ級タイトルマッチだ。王者の八重樫東が軽量級最強と言われた無敗の“ロマゴン”ことローマン・ゴンサレスを挑戦者に迎えた一戦である。大橋は次のように説明した。
「たとえば統括団体(WBA、WBC、IBF、WBO)の総会に行って『大橋秀行です』と言ってもだれも分かってくれない。ところが『リカルド・ロペスにベルトを獲られた大橋です』と言うと『おーっ!』となるんです。何が言いたいかというと、同じ時代に伝説になるような強い選手がいたら、たとえ負けたとしても絶対に戦うべきです。これはロペスさんと対戦して学んだこと。だから八重樫とロマゴンの試合も迷わず組んで、八重樫も即答でOKしてくれました」
そして今、大橋は日本が世界に誇る“モンスター”となった井上尚弥とともに新たな伝説を作ろうとしている。かつてのレジェンド、ロペスの目に井上はどのように映るのだろうか。
「井上は偉大なチャンピオンだ。パワーがあってしかも速い。技術的にも優れている。今後も自信過剰にならず、がんばってほしい。生涯無敗でいるためには? 私生活を律すること。常に準備を怠らないことだ」
大橋秀行が語る“井上尚弥とロペスの共通点”
大橋は9月25日、ロペス、井上と後楽園ホールのリングに上がり、「とても不思議で、とてもうれしい」と感想を口にした。思えば井上のデビュー間もないころ、大橋は井上の動きからロペスを感じ取ったことがあった。
「ボクシング教材のDVDを製作するとき、初めて井上とマスをしたんです。横へのフットワーク、どっかで見たことあるなと。前後じゃない。横の動き。あ、リカルド・ロペスと同じだと」
井上とロペス、2人には他にも似通ったところがある。大橋は強く感じている。
「2人とも真面目なんだけど、悲壮感がない。特に日本人選手って悲壮感があるじゃないですか。『負けたら終わり』とか、『この試合に命をかける』みたいな。井上にはそれがない。仮に負けたら『次に雪辱すればいい』、減量がきつかったら『階級を上げればいい』。そういう考えなんです。彼にとってボクシングはスポーツ、純粋にスポーツなんですよ。本当に好きでやってますから」