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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「自分、中学、高校とちょっとショボかったので…」“ドラフト1位候補”154kmサウスポー・金丸夢斗に「左腕王国」埼玉西武を推したい納得のワケ
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/03 06:03
今年のドラフトの「目玉候補」でもある関大4年の金丸夢斗(左)。新人王候補でもある武内夏暉(右)ら擁する「左腕王国」西武が向いている?
バッテリー間に近い20mぐらいのキャッチボールから始めて、投球フォームをなぞるように、きちんと右ヒザをベルトの高さまで上げて、テークバックもトップも投球動作と同じにして、そこから腕を振る。その連続動作を、徐々に距離を広げながら、1球1球、丁寧に繰り返す。
右中間フェンス付近まで、100mほどの距離になっても助走もつけなければ反動もつけず、それでもライナー性の軌道でいつまで経ってもボールが落ちないまま相手のミットに捕球音を立てる。これがルーティンだという。
「もちろん、真っすぐも自分の勝負球なんですけど、いちばん頼りになるボールはスプリットなんです。ここに入った頃は、変化球が投げられなくて、いろんな人に教わって試すんですけど、どれも合わない。結局、自分でいろんな握りを試して、こういう握りに」
これが、ちょっと独特で説明不能。
「左手の外旋の効いたシュート成分の強い腕の振りなので、右打者の外に沈めるイメージで……」
「テンポよく、球数少なく、守っている時間を短く」
そうなんだ! 左腕・金丸投手、クロスファイアーの角度も鋭いが、それ以上に、右打者の外角に跳ねるような球道の快速球がスイングの上方を通過して、空振りを奪う。こっちも間違いなく、必殺兵器だ。
「三振をたくさん取るのも痛快ですけど、投手としての自分の<最優先>は、そこじゃない。テンポよく、球数少なく、守っている時間をなるべく短くしてベンチに戻ってくれば、『よーし!』って気持ちになれる。打線の攻撃を勢いづけるようなピッチングをしたい。勝つためには、それがいちばんの近道だし、いちばん効果的だと思うんです。それには自分のコントロール、何よりの武器になるじゃないですか」
学生球界の「ミスターK」……そんなキャッチフレーズで紹介されがちな金丸夢斗。話してみると、自らの投手としての「本質」を客観的に見据えて、浮ついた軽薄感、まるでなし。「ピッチャーだなぁ」と思う。
それだけに、まず「土台」だ。
急ぐことはない。土台作りに1~2年、時間を使ったところでこれだけの高実戦力左腕の働き場なら、プロ野球の現場にいくらでもある。