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「僕がいなくてもF1は続く」フェルスタッペンがFIAの言葉狩りに引退覚悟で徹底抗戦…ドライバーにとっての最優先事項とは?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2024/09/27 17:01
2位となったシンガポールGP決勝後の会見で、言葉も笑顔も少なかったフェルスタッペン
「僕が木曜日の会見で口にした言葉は誰かに対して悪態をついたわけではなく、自分のマシンについて話しただけだ。それほど悪いことじゃないと思うし、それによって科せられたペナルティはかなり馬鹿げている」
予選後の会見に同席していたライバルのランド・ノリスとルイス・ハミルトンも、フェルスタッペンに同情した。ハミルトンは「冗談のようなペナルティだ。僕なら絶対に受け入れないし、マックスにもやってほしくない」と社会奉仕活動をすべきではないとコメントした。
昨年のラスベガスGPの公式会見で不適切な言葉を使用して警告を受けたフェラーリのフレデリック・バスール代表は、自戒も込めてこの問題を語る。
「私がそのことについて論評するのに最適な人物かどうかはわからないが、レース中の言葉遣いについては議論の余地があると思う。なぜなら、F1ドライバーは時速350kmでマシンを運転している。そんな彼らにとって言葉遣いが最優先事項だとは思わない」
誰のための規則なのか
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フェルスタッペンは2位でフィニッシュしたシンガポールGPレース後のFIA会見でも、最低限の受け答えしか行わず、FIAに対する抗議の姿勢を崩さなかった。直後に自チームのホスピタリティハウスで開いた緊急会見では、引退も辞さない構えを見せた。
「FIAがこの状況をどれほど深刻に受け止めるのかはわからないけど、僕は違う。もうたくさんだと思ったら、その時が来るだろう。僕がいなくてもレースは続くし、F1も続く。僕にとっても問題ない。そういうことだ」
F1はヘルメットをかぶったドライバーが狭いコクピットに収まって競い合うスポーツであるため、外から見ている者にとってはドライバーの様子が見えづらい。そのためチームとの無線は、ドライバーの心の裡を垣間見る唯一のチャンスとなる。
だが、その無線に私たちが求めるものは、正しい言葉遣いや美しい単語ではない。私たちが聞きたいのはドライバーたちの本音。それを統制するようなルールは設けるべきではない。