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分裂騒動にファンの減少…「スターダムを守れていない」中野たむは“どん底”からどう這い上がったのか?「怖くて、怖くて、何をしても涙が…」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2024/09/21 17:01
“どん底”から赤いベルトの王者へとカムバックした中野たむ。ケガからの復帰やスターダムの分裂騒動を経て、胸に秘めた葛藤を語った
「最初は叩かれまくって、アイドル崩れで、弱くて…」
こう言うと中野は少し間を置いて、スイッチが入ったように一気に語り続けた。
「中野たむという選手自身がスターダムの、女子プロレスの象徴になっていく。私は変わらない。世間がそれを認めていくだけ。私って最初アンチに叩かれまくって、アイドル崩れで、弱くて、ただキャピキャピしていているだけで、だれにも認めてもらえなかった。その私がどん底から這い上がる姿を見せてきて、だんだん……。白いベルト取って少し認めてもらって、コズミック・エンジェルズがあって、赤いベルト取って。ちょっとずつちょっとずつ、認めてくれる人たちが増えていった。
でも、私自身は何も変わっていないはず。言っていることもやっていることも変わっていない。私は世界中の人に中野たむを認めてもらって、スターダムを認めてもらいたい。中野たむがスターダムの中心で、中野たむがスターダムを引っ張っていく。スターダムを世界一に連れていく。世界中の人に中野たむを認めてもらう。それはスターダムを世界の人に認めてもらえるっていうこと。そこまで行きたい」
これまで数え切れないほどの挫折を味わってきた。そんな自分自身を「中野たむは弱いと思う」と表現した。同時に、「弱さを知っているから強いと思う」とも。
「自分の弱さを知らないと真の強さは得られないと思います。いつだったんだろう。アイドルの時にお客さんが3人だった時かもしれないし、ジュリアにボコボコにされて地獄を味わったときかもしれない。ケガして欠場してどん底を味わったから、今は中野たむ史上、一番強い気持ちでいられる。アンチに何言われても気にならない。どんな屈辱を味わおうとも、このスターダムは中野たむが守っていく」
中野の次の赤いベルトの防衛戦は「ずいぶん待たせてしまった」鈴季すずが相手だ。
「生きている中での理不尽なこととか、辛いこととか、イヤなこと、どうしようもないこと、そういうのあるじゃん。でも全部ここ、スターダムに持ってきてくれたら、私たちがみんなの気持ちも背負って戦うから」