プロレス写真記者の眼BACK NUMBER

分裂騒動にファンの減少…「スターダムを守れていない」中野たむは“どん底”からどう這い上がったのか?「怖くて、怖くて、何をしても涙が…」 

text by

原悦生

原悦生Essei Hara

PROFILE

photograph byEssei Hara

posted2024/09/21 17:01

分裂騒動にファンの減少…「スターダムを守れていない」中野たむは“どん底”からどう這い上がったのか?「怖くて、怖くて、何をしても涙が…」<Number Web> photograph by Essei Hara

“どん底”から赤いベルトの王者へとカムバックした中野たむ。ケガからの復帰やスターダムの分裂騒動を経て、胸に秘めた葛藤を語った

「ヒザは痛い。でもここで止めたら、去年とまったく同じになっちゃう。怖さとその怖さに負けたくないという気持ちとのせめぎあいで、正直メンタルめっちゃきつかったです。タイトルマッチの前日はずっと泣いていました。怖くて、怖くて、何をしていても涙が出てくる。でも最後までやり切れて、ベルトも取り戻せたので、逃げなくてよかった」

「中野たむ、大丈夫か」心配になるほどの悲壮感

 筆者は「中野たむ、大丈夫か」と感じていた。それはかつてあまりにもひ弱な中野に感じたものとは正反対で、困難に向かっていく姿に大き過ぎるエネルギーを感じたからだった。

 中野は8月に行われた『5★STAR GP』で全敗だった。一方、優勝者になった舞華は全勝だった。初防衛戦は全敗の王者vs.全勝の挑戦者の構図になった。

「プレッシャーは半端ない。赤いベルトのタイトルマッチとなると、団体最高峰ですから、それがスターダム全員の行く道を決める。みんながこの先食えるどうかもかかっている。タイトルマッチの重圧は半端ない。不安ですよ。全敗の女と全勝の女ですよ。もう私が知っている舞華じゃなかった。舞華にとって私はラスボス、私にとっても舞華はラスボス。そのラスボスを倒してスターダムを上に持っていくんだ、と」

 9月14日の大阪府立体育会館。大事な初防衛戦で躓くわけにはいかないという思いが中野を支配していた。

「負けたときのこと考えて試合やるやつがいるか、このボケ!」

 どこかで聞いたことがあるセリフを発した中野は、ちょっと静かになった。

「と、言いたいところなんですが、うん、考えないといけないのかな。その時は、たむロードの第2章ではなく、短い最終章になっちゃうのかな」

 しばし考えをめぐらせて、言葉を絞り出す。

「大阪の後、中野たむはどう変わっていくか? 白いベルトを取った時、スターダムに初参戦した時、赤いベルトを取った時でも、中野たむはずっと変わっていないんじゃないかな。いつも負けそうで、折れそうで、くじけそうで、でもどん底から這い上がってきた中野たむというプロレスラー像は変わらない。もし、変わるときが来るとすれば、終わるときじゃないかな」

【次ページ】 「最初は叩かれまくって、アイドル崩れで、弱くて…」

BACK 1 2 3 NEXT
中野たむ
舞華
刀羅ナツコ
ジュリア
鈴季すず

プロレスの前後の記事

ページトップ