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先輩から「お帰りなさい」試合後に涙…喫煙問題から2カ月、体操女子・宮田笙子(19歳)の復帰戦で見えた“大きな重圧”「自分が出たいと…」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2024/09/09 17:00

先輩から「お帰りなさい」試合後に涙…喫煙問題から2カ月、体操女子・宮田笙子(19歳)の復帰戦で見えた“大きな重圧”「自分が出たいと…」<Number Web> photograph by KYODO

9月7日、国スポ体操の成年女子団体総合の演技を終えて涙を流す宮田笙子

 一連の出来事に対し、大きな反響が起こった。オリンピックに出ないという結論に至ったことに対し、厳しすぎると見る向きもあった。一方で対極をなすように、当然とする意見もあった。

 仮に辞退という選択をしていなければ、おそらく何らかの処分はなされていたはずだが、行動規範等への違反があるにせよ、五輪代表はく奪に値する行為であったとは言いがたい。ただ、巻き起こった反響は大きかった。批判的あるいは否定的な視線も強かった。

 それは復帰に対しての重圧ともなっただろう。この日、試合が始まる前のいつにない緊張感、試合を終えての涙が、その大きさを物語っていた。

高校の先輩に言われた「お帰りなさい」

 しかも、負傷を抱えている中での出場だった。両足首は骨折に近いと表せるくらいの怪我を負い、試合を前に腰も痛めていた。

「正直、怪我があって、出られるか分からない状況でした」

 と宮田も語っている。

 それでも出場を選んだ理由をこう明かしている。

「自分が出たいと思ったのは福井県の皆さんのおかげだと思います。ほんとうにずっと支えてきてくれた深沢(こころ)選手、先輩と一緒にこれまで戦ってきた後輩たちが凄い笑顔で迎え入れてくれて。最後には『お帰りなさい』と言ってくれて、感謝しきれないというか」

 深沢は2022年、2023年の世界選手権にともに出場し2023年の大会ではパリ五輪の日本出場権獲得を果たしたチームメイトであり、鯖江高校(福井)の先輩でもある。学年的には3つ上にあたる。

 その鯖江高校で過ごす中で宮田は飛躍を遂げた。いわば今日の体操人生があるのも福井での日々あってこそだ。支えてくれた先輩や後輩とともに、原点と言える福井から出場したことは、再スタートとしてふさわしかった。

【次ページ】 ひとつだけ残る“ある疑問”

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