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ボクシングPRESSBACK NUMBER
ドヘニーの身体が真っ赤に…戦意喪失させた井上尚弥のボディ“驚くべき特徴”とは?“怪物と最も拳を交えた男”黒田雅之が感じた「重さ以上の痛み」
text by
森合正範Masanori Moriai
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/09/07 11:28
序盤から右ボディストレートを多く放った井上尚弥
井上尚弥のボディは「とにかく痛いんですよ」
6回終了間際、井上がラッシュから右ボディを放ち、7回に連打を浴びせると、ドヘニーは腰付近を押さえて戦意喪失。TKO勝ちで井上が4団体の王座防衛に成功した。ドヘニーは自力で歩けず、両肩を支えられながらリングを降りた。
――実際にスパーリングで拳を交えて、井上選手の右ボディの特徴は。
「痛いですね(笑)。僕がスパーをしていて思ったのが、とにかく井上選手の右ボディは痛いんですよ。ボクサーってグローブをしているし、腹にパンチをもらっても急所にもらわなければ我慢できるんです。急所をガードして『こっちをもらったら耐えよう』と考えるのですが、他のボクサーのボディより、すごく痛い。グローブの感覚じゃないモノが来るんです」
――ドヘニー選手も初めて井上選手のボディをもらって驚いたのでしょうか。
「驚いたと思います。階級とか関係ない。パンチが重い、軽いではなく、本当に痛いんで」
――初歩的なことを聞きますが、ボクサーは試合中パンチをもらっても痛くないんですか。
「衝撃はあるんですけど、痛さはないです。近い距離でガンガン殴り合って平気な顔をしているボクサーが、頭がゴツンと当たった瞬間、すごく痛がったり、嫌な顔をするじゃないですか。グローブは衝撃があるけど、痛くはない。でも、頭という硬いモノが当たるとすごく痛い。井上選手のボディはまさにあの感じ。あの痛みが腹に来るんです。僕の場合はスパーリングなので14オンスのグローブ。あれを(試合用の)8オンスでもらったら……」
ボディによってドヘニーには「制限がかかる」
――なるほど。
「例えば、普通の選手を相手にしたボディ対策なら、肘を下げようと考える。でも、井上選手のボディは痛いから、肘を下げた上で、一歩下がろうといった具合に、やらなきゃいけないことが一つ増えるんです。これはすごく大きなことで、やらなきゃいけないことが増えると、今度はこちらがやりたいことに制限がかかる。ボクシングって、相手がやりたいことの潰し合いだと思うんです」
――相手がやりたいことをいかにさせないか、ということですね。
「井上選手はそれがすごくうまい。言い方は悪いけど、俗に言う『相手を塩漬けにする』というディフェンシブな選手はたくさんいます。でも井上選手の場合、アグレッシブかつ、相手のやりたいことを潰していく。相手にとってすごく嫌なパターンです。みんな井上選手とスパーをやった後『何をしていいかわからなくなった』と言いますよね。本当にやりたいことができない。潰されていくんです」