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「実力としてまだ足りない」藤井聡太“八冠独占”から1年後の王座戦再戦…永瀬拓矢「止まっていた時間を前に」2人の心に芽生える“新局面” 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph by日本将棋連盟

posted2024/09/08 06:01

「実力としてまだ足りない」藤井聡太“八冠独占”から1年後の王座戦再戦…永瀬拓矢「止まっていた時間を前に」2人の心に芽生える“新局面”<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

藤井聡太vs永瀬拓矢、あの激闘の王座戦から1年。第1局は藤井が制した

 戦型は角換わりとなり、藤井は「△3三金」と上げる手法を用いた。後手番になったら予定の作戦だという。なお、今年4月に伊藤との叡王戦第2局でも用いて敗れたが、何か改善策があるのだろう。

 藤井は後手番ながら右銀を四段目に進めて先攻すると、永瀬は自陣の守りを固めて対応した。藤井は中盤で二歩得となり、永瀬はその引き換えとして敵陣に角を打って自陣に成り角(馬)を作り、実戦例が少ない展開となった。

 永瀬が馬を四段目に上げて敵陣に利かすと、藤井は自陣の三段目に角を打って対抗した。馬と生角では後者の方が分が悪いが、藤井は仕方なく打ったようだ。その後、藤井が銀交換して9筋の端攻めにいくと、永瀬は馬の利きで応戦して難しい攻防手順が続いた。藤井は自陣の角の使い方を気にかけていたが、それを攻めに生かせた。永瀬も相手玉に迫っていった。

緩急をつけた指し回しに「強すぎ太」の声も

 終盤では両者のぎりぎりの攻防が繰り広げられ、控室の検討で優劣は不明だった。そんな状況で永瀬は金と角を捨てる勝負手を放ったが、結果的に不発に終わった。藤井が冷静に対処して逃げ切った。敗因がよくわからない激闘譜だった。

 王座戦第1局は藤井が124手で勝った。残り時間はともに0分。終局時刻は20時30分。

 藤井王座は終盤で緩急をつけた指し回しが絶妙だった。ネット上では「棋神のごとく」「強すぎ太」などの声があり、不調説は払拭されたようだ。王座戦第2局は9月18日に愛知県名古屋市「名古屋マリオットアソシアホテル」で行われる。

 調子が良いという永瀬九段にとって、王座戦で負けなしの5勝をしている「元湯陣屋」での第1局に敗れたのは痛かった。しかし第2局で勝って五分に持ち直せば、王座奪還の可能性は十分にありうる。昨年繰り広げられた激闘の再来となるか――秋の番勝負はここから熱を帯びる。<王座戦レポート:つづく>

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