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将棋PRESSBACK NUMBER
「あああああーーっ!!」「そんなあ!!」藤井聡太“八冠達成の大逆転劇”に響いた悲鳴…記者が見た“テレビに映らなかった”全冠制覇の舞台裏
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/10/18 06:00
大盤解説会に姿を現した藤井聡太八冠。八冠誕生までの1週間に臨んだ竜王戦と王座戦を取材した記者が振り返る――
報道陣は36社110人
《10月11日、王座戦第4局:歴史的な大逆転の瞬間、現場は》
竜王戦第1局から4日後、藤井竜王・名人の戦いの舞台は東京から京都へと変わる。ウェスティン都ホテル京都で開催される王座戦第4局に勝利すれば、前人未到の八冠全制覇となる。
「八冠達成なるか」ということで、常に将棋を取材しているメディア以外の注目度も明らかに高かった。
昼過ぎにホテルに到着すると、会場外には4、5つのテレビクルーが中継に備えている(藤井竜王・名人の姉弟子である室田伊緒女流二段の姿もあった)。聞けば、この日に集まったのはペン記者・フォトグラファー合わせて、36社110人だったという。“午後のおやつ”を両対局者が食している時点で、メディア控室はパンパンに膨れ上がっていた。
これで有利ってどういうことなの?
対局は序盤から中盤にかけて、先手の永瀬王座のリードで進んだ。それはABEMAや囲碁将棋プラスで表示される評価値だけでなく、検討陣も同じ見立てだったようだ。ただこの日取材に訪れたメディアは“将棋初心者”も多く、「これで有利ってどういうことなの?」「緊張に耐えきれなくて、自分の番になったらすぐ動かしてしまいそうです……」との会話も聞こえてきた。
気づけば取材控室の窓から見える京都・東山の風景は闇に包まれていた。
評価値は永瀬王座の90%超え、移動中に…
「19時頃に終わりますかね」「いや、この2人の対局だから少なくとも20時台には突入するはず」
こんな会話が聞こえる中で対局は最終盤に突入する。「はっきり負けという局面がありました」と藤井竜王・名人が対局後の会見で語ったように……一度は後手が形勢を少し押し戻したものの、先手の永瀬王座が粘り強く指し続け、優勢を築く。