猛牛のささやきBACK NUMBER
「オレが一番喜んでるよ」山本由伸から届いたメッセージ「100日ぶり一軍登板」オリックス・宇田川優希の長い苦闘と“小木田世代”の絆
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2024/09/08 11:04
苦しみの時を経て戦列復帰した宇田川。その陰には同い年の仲間たちの絆があった
「縮こまっていた自分がいました」
気持ちの面でも変化があった。
「僕はもともと細かいコントロールは持っていないので、多少荒れてもバッターとストライクゾーンで勝負して、高めのまっすぐで空振りやファールを取る、というタイプ。それなのに、なんかキレイに投げようと思いすぎて、縮こまっていた自分がいました。
去年はフォアボールが多かったので、『フォアボールを出したくない』という思いが強すぎて、腕が振れなくなっていた。コースも『低く』とか、そんなコントロールもないのに考えすぎて、らしくないことやっていたなと今は思います。
それより、僕は腕を振って、高めにビュンビュン行ってもいいからストライクゾーンで勝負していこうと。キレイにじゃなくて、荒れても、ランナーを絶対ホームに返さない、0で抑える。今はそういう気持ちです」
“スーパーカー”ゆえの難しさ
過去2年、勝負どころのブルペンを支えた剛腕の復調に、コーチ陣もひとまず胸をなで下ろしていた。
「やっと。やっとです」と厚澤和幸投手コーチは苦笑した。
「やっと、バッターと勝負できるようになった。ずーっと舞洲で自分と戦っていたから。ウダに限らず、自分のことが気になって入り込んでしまう選手は結構いるんですけど、そうなると難しい。食うか食われるかの世界なので。
バッターをやっつけにいかないといけないのに、自分と戦って、自分のことで精一杯になっているうちは無理。今やっとバッターと対峙できるようになって、その不安はなくなりました。もっと早くやってほしかったですけどね。(山崎)颯一郎はまだ自分のことで精一杯な状況なんですけど。
球が速い投手に多いですね。たぶん車の操縦と一緒で、スーパーカーを運転するよりも、軽自動車を運転するほうが簡単ですもんね。スーパーカーは(少しのズレで)操縦がきかなくなったりする。パワーピッチャーには結構あるあるです。
彼らが休んでいる間に芽が出た選手もいるので、一概にすべてダメだったというわけではないけど、ウダには同じことは繰り返さないでほしいですね」
「小木田世代、なにしてるん?」
宇田川が8月に復帰登板を果たす少し前、小木田世代のグループLINEに、ロサンゼルスにいる山本由伸(ドジャース)から通話の着信があった。
「小木田世代、なにしてるん?」