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「オレが一番喜んでるよ」山本由伸から届いたメッセージ「100日ぶり一軍登板」オリックス・宇田川優希の長い苦闘と“小木田世代”の絆
posted2024/09/08 11:04
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
SANKEI SHIMBUN
シーズン終盤、いよいよ“小木田世代”の反撃が始まるのか−−。
その第一歩を、宇田川優希が踏み出した。
8月27日のソフトバンク戦で、5月15日以来約100日ぶりの一軍登板を果たすと、150km台前半の威力のあるストレートで2三振を奪う鮮やかな投球で復帰戦を飾った。
蘇った球威と自信
宇田川らしい打者をねじ伏せる力強い投球が戻ってきた。その表情と言葉からも手応えがうかがえた。
「今自分ができることをやる、というふうに整理してマウンドに上がれています。春頃は高めのまっすぐをなかなか振ってもらえなかったので、勢いもキレもないのかなと感じていたんですけど、今は、高めで結構空振りを取れているので、だんだん自分のまっすぐを投げられてきているのかなと。フォークも、自分のフォークだなという感じが最近出てきました」
育成ドラフト3位で2021年に入団した宇田川は、2年目の夏に支配下登録され、剛腕セットアッパーとしてその年のリーグ優勝、日本一に大きく貢献。昨年のWBC日本代表にも選出された。
だが今年は、昨年から抱えていた右肩のコンディション不良のため出遅れた。4月24日に今季初登板を果たすが、球の威力も制球も本来の調子ではなく5月17日に登録を抹消されていた。
「体のメカニクスの問題なのか、気持ちの問題なのか、ずっとわからなかった」
「だまされたと思って…」
ファームでも浮上のきっかけをつかめず行き詰まっていた時、鈴川勝也トレーナーに「だまされたと思って、一緒にやってみよう」と上半身のトレーニングメニューを渡された。宇田川にとっては不安になるほど軽い負荷でのトレーニングだったが、そのメニューや短距離ダッシュを繰り返すうちに、体にキレが戻ってきた。
オフは右肩の不調のため軽いキャッチボールしかできなかった分、ウエイトトレーニングに重点を置いていたが、それにより体のバランスが崩れてしまっていたという。
「投げられない分ウエイトで、と思っていたんですけど、やりすぎて余計な筋肉がついてしまった。今は余計なところの筋肉がなくなってきて、腕が振れるようになりました。ウエイトと、ボールを投げることを、バランスよくやらないといけないと学びました」