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“衝撃の1回KO”世界3階級制覇王者・中谷潤人が語る「過去イチきつかった地獄の砂漠トレ」…金メダリスト・阿部一二三から刺激を受けた会話とは
posted2024/09/05 17:04
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
過去で一番きつかったトレーニングとは?
中谷潤人を強くする「虎の穴」がある。
師のルディ・エルナンデストレーナーが拠点を置くアメリカ・ロサンゼルスのジム。中学卒業後にプロボクサーを目指して渡米し、研さんを積んできた場所である。
「アメリカに行くと、15歳のときと変わらず初心に戻れるんです。よりボクシングを楽しめる環境だし、必ずいい調整ができる。刺激をいっぱいもらえるし、守りに入らず、いろんなことにチャレンジできる場所でもあります」
中谷がボクサーとしてまだ何者でもなかったころ、午前も午後もスパーリング漬けだった。ルディの指導は実戦形式が中心。いろんな国籍のボクサーと、いろんなタイプのボクサーと拳を交わしてきた。終了のベルと同時に打ってくるヤツもあれば、クリンチの際に太ももを叩いてくるヤツもいる。反則スレスレにも、ダーティーなテクニックにも、対応できなければやられるだけ。数をこなせばこなすほど、中谷は対応力を身につけていく。それがとても刺激的で、ボクシングは楽しいといつも思えた。15歳のころと、26歳になった今もそれは変わらない。
過酷なトレーニングで追い込むのがルディ流である。過去イチきつかったトレーニングは――。そう尋ねると中谷は苦笑いを浮かべて言った。
「世界チャンピオンになる前だったと思います。車で1時間半くらい掛かるところに砂漠があって、ルディにそこに連れていかれて。行く話は聞いていても、どんなメニューをやるかまでは教えられていなかった。着いたら、周りは岩しかなくてメチャクチャ暑くて。炎天下で全力シャドーと走りを延々に繰り返すっていう。車のなかもヒーターをつけていて、ルディも凄く汗をかいていましたね」
12ラウンドのスパー後に「もう1ラウンド」
この地獄の砂漠トレをともにしたのが、現WBO世界フライ級王者で、日本でも人気を高めているアンソニー・オラスクアガである。過酷なトレーニングをお互いに励まし合いながら乗り越えていくことで絆も深まっていった。