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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「柔らかかった」世界バンタム級王者・中谷潤人がいま明かす“1回衝撃KOの真相”「試合前からボディーは当たる気がしていた」
posted2024/09/05 17:03
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamamoto
衝撃KO劇の真相
こんなKOシーン、なかなかお目にかかれない。
7月20日、東京・両国国技館で行なわれたWBC世界バンタム級タイトルマッチ。王者・中谷潤人が1位ビンセント・アストロラビオ(フィリピン)を沈めた左のストマックブローのことだ。
その瞬間は突然に訪れた。
1ラウンド、残り40秒を切ったところだった。伸ばしたボディーストレートがものの見事にみぞおちにめり込むと、アストロラビオはステップバックして顔をしかめながらたまらずダウン。キャンバスに両ひざをつき、右手、左手とグローブで交互に腹を押さえて回復を待ったうえで立ち上がったものの、またしてもうずくまったことでレフェリーの手が交差された。レフェリーに抱えられ、口を広げて大きな深呼吸を繰り返す。どれほどの威力だったかがうかがえる。
何がレアなのかって、このフィニッシュが最初のボディーショットだったということ。解説席に座った同タイトルを12度も防衛した“神の左”山中慎介も「1発目の見えないボディーってかなり効きますからね」と唸っている。
上を打ち続けてボディーを空ける元々の作戦だったのか、それとも戦いの流れのなかで導き出した“アドリブ”だったのか。衝撃KOの真相を知るべく、いつものアメリカ合宿に旅立つ前に相模原にあるM.Tボクシングジムを訪れた。
あのKO劇からちょうど1カ月。体つきを見ても試合前とそう変わらない。
ノーダメージだったこともあってオフは1週間ほどで切り上げ、精力的にトレーニングに励んでいる。国内での走り込み合宿を既に済ませ、渡米してルディ・エルナンデストレーナーのもとで追い込む下準備を整えた。
「ボディーは当たる気がしていた」
アストロラビオを沈めたストマックブローについてあらためて尋ねると、彼は意外なことを口にした。